【愛しのマイルーム】第1話:広さの決め手は家具でした。1人暮らし60平米以上のお宅
編集スタッフ 齋藤
憧れの部屋はたくさんあるけれど……
10代のときから、インテリア雑誌を眺めるのが好きでした。パラパラとページをめくれば、ステキに暮らしている人がたくさん。
だから実家を出て、はじめて一人暮らしをしたとき、私の頭の中は「憧れ」でいっぱい。
けれどもいざ実家を出てみれば、時間のなさにお金のなさ、また都内ではそう簡単に欲しい部屋の面積も手に入らないと、現実を知ることとなりました。
でも最近になって、またインテリアが楽しくなってきたんです。
街ゆくあの人にも、愛しの部屋がきっとあるはず!
それは「憧れの部屋」が、自分にとっての「良い部屋」とは限らないと気づけたからかもしれません。雑誌や他の人を参考にすることもあるけれど、自分自身を軸にして、等身大で目の前の暮らしと向き合う方が、ずっと楽しかったのです。
そして、街ですれ違う知らない人たちにも、誰に見せるためでもない、自分のための居心地の良い空間や大切なものが、きっとあるはず。
そこで今回のこの特集では、職業も年齢も家族構成も異なる一般の方のお宅に伺い、お部屋を見せてもらいました。
第1回目の今回は、不動産関係の会社で会社員として働く、石川さんのお宅です。
家具が大好きな、石川さんのお宅
さて、やってきたのは埼玉県。駅から10分ほどのところに、1人と1匹で暮らす、石川さんのお宅があります。
「飼っていらっしゃる猫ちゃんもぜひ見たいです〜」とお願いしたところ、押入れでのんびりしているところを連れてきてくれました。
▲石川さんと、見知らぬ私に逃げ腰な猫のさらちゃん(6歳)
1980年代に流行した雑誌「Olive」などの影響も相まって、家具やインテリアが大好きになったという石川さん。お仕事もインテリアコーディネーターからリフォーム、住宅の設備関係から現在の不動産まで、家周りのことは一通り経験されているそう。
はじめて家具をオーダーしたのは、なんと大学生の時。お店の人も石川さんのように若いお客さんは滅多にいなかったらしく、びっくりしていたそうです。
石川さん:
「素材や段数を選ぶだけだったので、セミオーダーなんですが、青山にある『WOOD YOU LIKE COMPANY』というお店に本棚を頼みました。
かかったお金は15万円ほど。今思えば学生だからそんなにお金もなかったはずなのに、初めての一人暮らしや自分の部屋を作ることに夢中で、奮発してしまいました」
▲ランプ:イイノナホ「Kirakira Lamp」、チェスト:「Fusion Interiors」で購入したオランダ製のヴィンテージ
「一体いくらインテリアに使ったのか」と、苦笑いしてぼやく姿も、どこかうれしそうに見えたのは私だけでしょうか。
買った家具はとても大切に使っているらしく、手放したものはないそう。
暮らし周りにしっかりお金をかけるタイプなのかな?と思ったものの、キッチンを見てみると、食器類は必要最低限。とても少ないのが印象的でした。
石川さん:
「料理は休日にまとめて作ってしまいますし、そんなに凝ったものでなくても十分おいしいと思っているので、調理器具は最低限のものが揃っていればいいと思っています。
あと食器は、集め出すと止まらなくなりそうで……笑。その他収納用品は、かごなど使い途がいろいろありそうなものを買うようにしています」
1人で60平米って、持て余しませんか?
ちなみに石川さんのお宅、2DKの間取りでとても広々としています。聞いてみると、60平米以上あるとのこと。
私も現在1人暮らしをしていますが、ここまでの広さに住むことは考えたことがありませんでした。
そのためつい気になってしまいます。どうしてこの広さに住もうと思ったのでしょう。そして、1人だと持て余しませんか?予算内で物件は見つかるものですか?
▲ダイニングテーブル:WEBショップ「a・pex」で購入したデンマークのヴィンテージ
石川さん:
「私の場合、最初から『50平米以上』という前提で、物件探しをはじめました。
広さがあれば、大切に選んで買った家具を妥協せず映える位置に置けるなぁと思ったんです。そしたらこの部屋を見た瞬間に、持っていた家具の配置がぽんっと頭に浮かんだので、思わず即決。
量は一人分ですが、家具を引き立たせるために余白を十分にとっているので、スペースを余らせることなく使えています。
都内を出たこともあり、面積の割にリーズナブルだったのも決断のポイントでした」
▲家具への興味から、椅子もワークショップへ通いデザインしたそう
石川さん:
「それに広さがあるからこそ猫ものびのびと動きまわっていて、楽しそうな姿が見れるのもうれしいです」
わたし齋藤はいつも物件を探すときに、「1人だから大体20〜30平米前後かな」と、先入観を持って探していました。
でも石川さんの場合は、まず部屋をどう使いたいかを考え、後々それに必要な面積を考えたようです。
引越して以来、照明に夢中です
▲吉祥寺にある『MARKUS』で購入
石川さん:
「なぜかはよくわからないんですけど、照明の差し込み口が、妙にたくさんある物件なんです……」
お部屋を案内してもらいながら、ふと石川さんが首をかしげました。
確かに……。玄関に至っては、1メートルくらいの距離に2箇所もついています。さらにソファをおいている部屋には、8畳くらいのスペースなのに3箇所も(齋藤調べ)
石川さん:
「照明をたくさん飾れるチャンス!と思っていろいろ探していたら、安土草多(あづちそうた)さんというガラス作家の展示会に偶然行く機会があり、イメージにぴったりだったので、思わずいくつか買ってしまいました。
玄関にはせっかく2つ付けるところがあるので、西荻窪にある『ひぐらし古道具店』で買ったものと、安土さんの照明を組み合わせて楽しんでいます」
引越しをしてしばらく経つと、最初は気づけなかったけれど、不思議だなぁと思う部分が出てくることってあるものです。
でも一見変わっているそんなところこそ、使い方次第で楽しみや個性が生まれ、いつの間にか愛しいポイントになっていることも。
この物件の照明も変わっているポイントではあるけれど、変わっているからこそ新しい楽しみが生まれたようです。
基準を変えれば、部屋選びはもっと自由になるかも
石川さん:
「光がいっぱいに差し込み明るいのも、この物件に決めた理由のひとつでした。まるでお店みたいに、窓が大きいんです。
ソファもこの家に越してきて購入したもの。
最近は開放感のあるこの空間で、のんびり過ごすのがお気に入りです」
▲さらちゃんお邪魔しました〜
ともすれば持て余してしまいそうなのに、広々した空間を楽しそうに使いこなしている石川さん。
大切に選んだ家具や作家ものの雑貨たち、そして部屋の余白も含めて、石川さんの想いを感じられるからか、決して殺風景な印象は受けず、温かみを感じられるお部屋でした。
今まで部屋の面積に対し、どこか先入観を持って物件を探していた私。
でも一般的な数字は基準になるけれど、そればかりではないはずです。
石川さんにとっての家具のように、自分が愛しいと思えるものを基準にすれば、部屋選びはもっと自由になるのかもしれません。
次回は「リビングが本だらけの3人暮らし」のお宅に伺います。
つづく第2話で伺ったのは、都内に住む3人家族の成重(なりしげ)さんのお宅。
写真が大好きな美容師の夫と、「文字に囲まれていたい」という妻のこだわりで生まれた空間は、玄関入ってすぐに本や雑貨、写真であふれています。
まるで雑貨屋さんみたいで、思わずワクワクしながら取材をしてきました。
(つづく)
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