【窓辺ライフ】前編:カーテンはもっと自由になる?窓から考えるインテリア

ライター 小野民

憧れは、海外の写真で見た開放感があって美しい窓辺。すてきなしつらえを妄想もしますが、気に入ったカーテンが見つからなかったり、外からの視線も気になったり、アイデアが浮かばなかったり。インテリアを考えるにあたり、制約が多く悩みがちな場所でもあります。

我が家の窓辺も結局手つかずで、間に合わせで買った可もなく不可もない風情のカーテンは、自分の妥協の産物な気がしてちょっと残念な気持ちでいます。

もし、少しの工夫で窓辺をお気に入りにする方法があれば、居心地のいいスペースが増えて、家で過ごす時間もより楽しくなりそう。そこで窓辺を楽しむ「窓辺ライフ」のヒントを見つけたいと思いました。

 

暮らしの装飾家・ミスミノリコさんを訪ねました。

窓辺を楽しむ工夫を伺いに訪ねたのは、暮らしの装飾家・ミスミノリコさんのご自宅。

インテリアショップや展示会のディスプレイデザイナーとして活躍を続ける一方、身近なアイテムの装飾や繕いものなど、普段の暮らしに取り入れやすい提案を発信しています。

団地の一室に、料理家の夫と2人で暮らすミスミさん。キッチン、リビング、ダイニングがひとつの空間に収まったスペースはベランダに面し、日当たりは良好です。

ミスミさん:
「食事も、仕事も、一息つくのもほとんどがこの部屋。1日のうちで長く時間を過ごすから、お気に入りの空間になるよう、工夫しています。

窓が大きな面積を占めるから、手を加えただけ印象が変わるのがおもしろくて、窓辺を意識した空間づくりをしていますよ」

ミスミさんの家にある雑貨や家具は、ジャンルやテイストにこだわりはなく、共通項は「お気に入り」であること。

1日の大半を過ごすという窓辺には、お気に入りを使い勝手よく配置して、気持ちのいい時間を過ごす工夫をしていました。

 

「カーテン」はもっと自由になる? 光と風を楽しむ窓辺。

ミスミさん:
「最初は気に入るカーテンがなくて、間に合わせの気持ちで、手持ちの布を下げていたんです。そうしたら、お気に入りの布を見ながら過ごせると嬉しいな、と発見して。以来、季節や気分で入れ替えながらずっとこのスタイルです。

布が好きで集めていても、しまいこんだままになってしまうことも多いですよね。それよりも、こうやって窓辺のカーテンとして活用すれば、役目も与えられて一石二鳥です」

ミスミさん:
「住んでいる階や窓ガラスの材質によりますが、うちの場合は視線も気にならないので薄手の布でも十分。足元はベランダで隠れるので、夏は短めにしています。

複数の布を使うなら、長さを揃えないことと、透け感の違いを組み合わせることがポイント。バランスが取りやすいですよ」

▲(左から)キッチンリネン、インドの丸テーブル用のテーブルクロス、インドのカディをクリップに挟んで下げただけの手軽さ。

ミスミさん:
「分厚いカーテンで家の外と中をしっかりと区切ってしまうより、中にいても外の気配が感じられるようなあいまいさが好き。そういう意味でもこのスタイルは私に合っています」

 

窓辺の特等席に、お気に入り集合

夫の仕事の関係で家にやってきた、小さな冷蔵庫。置き場所がなくてダイニングの窓辺に置いてみたら、意外と便利だったそう。

冷蔵庫の上は、ミスミさんが集めているピッチャーを中心に、お気に入りが集うスペースになりました。

▲陶芸教室で作ったにわとりの小物入れやキャンドルなど、アースカラー、石っぽい材質で雰囲気を統一しています。

ミスミさん
「窓辺で過ごす時間が長いから、よく目につく場所に、特に愛でたいものを配置しています。

枝ものをここに生けるのも同じ理由。ここに座ると、木を見上げているような感覚になれるんです。私はいつでもどこかに木を感じていたくて、この住まいも木々が見下ろせるから選んだくらいなんです」

 

キッチンの端っこでも。椅子を持ち込んで飲食スペースに。

ミスミさんの家のキッチンにも、まろやかないい光が差し込みます。時間のないときの朝ごはんなどは、クロスをひいてこちらで食べることも。

ミスミさん:
「朝早く起きた時はスツールに腰掛けて、お白湯をいただきながら外を眺めて1日のスケジュールをシミュレーションしてみたり、キッチンでささっと朝ごはんを済ませることもあります。

座る位置が変わると、光や風景の見え方も変わるので、ちょっとした気分転換になりますよ」

▲買い求めたり、手作りした鍋つかみの数々。

西陽のきれいな日は、夕陽がきれいにさす部屋でお茶を楽しむというミスミさん。「その場所はカフェ西陽って呼んでます(笑)」。

あまり意識することがなかったけれど、窓辺の光や景色の変化にいつもより少し敏感になってみると、わたしの家にも素敵な場所が見つけられそう。

椅子を一脚おいてコーヒーを一杯。そんなささやかな楽しみを日常に加えてみたくなりました。

 

外の世界と家のなか、その境界線で見つける楽しみ

ミスミさん:
「旅先でも住まいや暮らし方が気になります。海外へ行くと、お庭にソファが置いてあって居間のようにくつろいでいたり、外と中の境界があまりない感じがすてきに感じました。

同時に、暮らしの楽しみを見つけるのが上手だな、とも。住宅事情は違うけれど、団地の窓辺でも暮らしの楽しみはきっと見つけられると思うんです」

ぴったりのカーテンが見つからないところから始まった、ミスミさんの窓辺づくり。苦肉の策だったはずの、お気に入りの布のカーテンは、窓辺をぐんと愛しい空間にしてくれています。

後編では、ミスミさんが引き続き登場。手軽に窓辺を楽しむアイデアを教えていただきました。

(つづく)

【写真】志鎌康平


もくじ

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ミスミノリコ

ディスプレイデザイナー/暮らしの装飾家。武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科テキスタイルコース修了後、株式会社サザビーにてウィンドウディスプレイやスタイリングの仕事に携わる。現在はフリーランスとして店舗のディスプレイや雑誌、書籍のスタイリングなど幅広く活躍しながら、ふだんの暮らしに取り入れられるデコレーションアイデアや手作りの楽しさを発信。著書に『繕う暮らし』、『小さな暮らしのおすそわけ』(主婦と生活社)など。8月に『繕う愉しみ』が発売予定。インスタグラム(@min_msmi)も人気。http://room504.jp

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ライター 小野民

編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫3匹と山梨県在住。


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