【訪ねたい部屋】第1話:物件選びは「光と窓」を重視。65平米のコーポラティブハウスでの暮らし

ライター 藤沢あかり

「その人らしさ」を感じるインテリアは、いつだって魅力的です。

住まいそのものや家具はもちろん、配置の仕方や収納の場所、さらには毎日使うコーヒーカップ。そんな暮らしのひとつひとつに生活があり、選んだ理由や背景が潜んでいます。

特集「訪ねたい部屋」では、実際にその方のお宅へお邪魔するような視点で、そして友人とおしゃべりするような気持ちで、その人らしさとインテリアの関係性を紐解くシリーズです。

今回、私たちが「おじゃまします」と伺ったのは、イラストレーターの大森木綿子(おおもり ゆうこ)さん。心に浮かんだ風景や四季折々のモチーフを、みずみずしいタッチで描いています。

▲大森さんがライフワークのように作り続けているポストカード。一枚一枚、角を丸く仕上げる裁断や封入など、手作業で仕上げを行っています。

夫と愛犬のパグ・ポン太郎、2人と1匹で暮らしているのは、住み始めて10年が過ぎたというコーポラティブハウス。1階がお風呂やトイレなどの水回り、2階が寝室、そして3階がワンルームになったキッチン&ダイニングという、3階建てのつくりです。

そもそも、コーポラティブハウスって? 間取りを決めたポイントや、「住まい」を自分たちらしく、居心地よくするアイデア、限られた空間で好きなものに囲まれて暮らす秘訣を、全3話でお届けします。

 

戸建と集合住宅のいいとこ取り? コーポラティブハウスという選択肢。

大森さん:
「結婚とほぼ同時期に、このコーポラティブハウスづくりに参加しました。

もともと、夫婦2人とも家づくりに憧れがあったんです。でも、一戸建てとなると住みたいエリアと予算とのバランスが難しいところ。普通のマンションも見に行きましたが、私たちが求めているものとは、なんとなく違う気がして。

そんなときに知ったのが、コーポラティブハウスという選択でした。

複数の入居者たちが集い、共同でひとつの集合住宅を建てるというものです。一軒丸ごと自分たちだけで建てるよりはハードルが低いうえ、間取りや内装は自由に決められるので、思わぬかたちで家づくりという希望を叶えることができました」

▲ダイニングルームの一角には、「TRUCK furniture」で購入したオープンシェルフを置いて。メガネや時計、アクセサリーといった毎日身につけるものや、仕事道具、日用品などあらゆるものをここに収めています。

 

2人の好みをミックスさせた、古いものに囲まれた暮らし

▲壁に飾った大きなオブジェは、古いピアノの構造部分を解体したもの。アンティークショップで一目惚れし、ここに飾りたいと決めて迎え入れました。

夫婦揃って、大のインテリア好きだという大森さん。

3階のダイニングスペースには、昔から変わらず好きだという古いものやアート作品、季節の草花、ドライフラワーなどがあちらこちらに表情を添えます。

▲形や素材もさまざま、個性たっぷりの椅子はどれもアンティークショップで選んだもの。

▲「季節の花やグリーンはなるべく欠かしません。仕事中、ふと目をやった先にあるとリラックスするし、そこから絵のモチーフが生まれることもあるんです」

大森さん:
「古いものが好きというのは共通していますが、夫が選ぶものは、私とは似ているようで少し違うんです。

自分では選ばないテイストが加わることで、今のインテリアになっているのかもしれません。私1人では表現できない空間になって、結果的に良かったと感じています」

▲夫がアンティークショップ「HIGH-LIGHT」で選んだという、インダストリアルなテイストの古いランプ。ドライフラワーと重ねることで無骨な雰囲気が和らぎ、空間を引き締めるアクセントに。

 

物件選びは「光と窓」を重視。

さてこの部屋、足を踏み入れると天井まで届く大きな窓からの明るい光が部屋を包み、実際の平米数に対して、とても広く感じます。

大森さん:
「物件を見るときは窓や光を重視しています。

この家の間取りを決めるときも、できるだけ仕切りを設けずに開放的なつくりにしました。その方が広く感じられるし、光や風が抜けるのが気持ちいいと思うので」

▲使い込まれた軌跡が愛おしく感じられるのは、アンティークだからこそ。

ところで、3階建の住まいでは、2階にリビングをもってくるお宅が多いように思いますが、この間取りはどうやって決まったのでしょうか。

大森さん:
「この家は構造上、2階と3階で方角が異なるんです。

3階は南向きなのに対して、2階は北向き。南向きのあたたかな場所、ここにキッチンとダイニングを置きました」

イラストを描くことが暮らしの軸である大森さんは、1日の大半を自宅で過ごします。

会社員の夫を送り出したあとは、大きなダイニングテーブルが創作の場。さらに、家族での食事や友人らとの語らいも、このダイニングです。一番長く過ごす場所を、一番居心地よくすることは、毎日をご機嫌で過ごすことにもつながります。

大森さんの暮らしの中心にあるのは、家族や友人が集い、アトリエでもあるダイニング。その主役であるテーブルは、どのようにセレクトされたのか、気になるところです。

第2話では、その選んだ理由や、そこから始まる住まいづくりについて、さらに深く伺っていきます。

(つづく)

【写真】鍵岡龍門

 


もくじ

 

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大森木綿子

「心に浮かんだことや身近なもの」をテーマに、柔らかさと透明感に満ちたタッチで描くイラストレーター。紙雑貨やテキスタイル、書籍の装丁、パッケージデザインなど、暮らしをそっと彩る作品を生み出している。2018年11月20〜30日まで、千葉県習志野市のギャラリー『and R』にて企画展を予定。

 

 

ライター 藤沢あかり

編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。

 

 


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