【ユーモアはそこにある】第2話:たとえ前に進めなくても。泣いても、甘えても、いいときだってある
編集スタッフ 寿山
生きていれば、いいことだって、悪いことだって起こるもの。降ってわいたような悲しい出来事が起こったとき「どうして私なんだろう」と、思わずにはいられません。
でも、ただ落ち込むだけでは、いつまでも前に進めない。悲観するだけじゃなくて、自分なりに解釈することで、前に進める人になりたいと企画した今回の特集。
1話目に続き、目黒で洋服店「OWL(アウル)」を営む、山岸奈緒子(やまぎしなおこ)さんにお話を伺います。
前に進みたいのか。それすら、わからなくなる事だってある
1年前に夫を亡くした奈緒子さん。その直後は、現実を受け止めることが出来ないまま、自分がどうしたらいいのかわからず、ただただボンヤリしていたと話します。
そんな彼女を、近所の顔なじみのおばあちゃんたちが心配して、代わる代わる家にやってきたそう。
「私たちも夫が戦死したけれど、当時は生きていくのに必死で、とにかく働いて食べることしか考えなかったわ」と、仕事を再開するよう勧められ、助言されるまま、葬儀のあと程なくして店を開けたといいます。
奈緒子さん:
「90代のおばあちゃんが、朝になると『今日もお店を開けてよね?』とモーニングコールをくれるんです。店を開けると確かに来るんですけど、何を買うわけでもなくて。しまいには『私は動物柄は着ないわよ』と、帰っていくんです(笑)。
そうかと思えば、80代のおばあちゃんが犬の散歩のついでだと、店の前で私が来るのを待ち伏せしてる。『遅刻したら許さないわよ!』と、毎日のようにお尻を叩かれて、なんとか仕事をしていました」
大人も、泣いていい。
奈緒子さん:
「ご主人を亡くしたばかりのお客さまにアドバイスされて、泣くのを我慢しないようにしたら、涙腺をコントロールできない状態になってしまったんです。
ところが、ご近所さんもお客さまも、店で私が涙を浮かべても上手にかわしてくれて。いろいろ察して、少しでも気持ちが軽くなるように接してくれたことに、本当に助けられました。
そのおかげで、だんだん泣いてもいいんだと思えるようになってきて、もう毎日泣きながら服を作っていました」
遠慮なんて、必要ないときも
仕事は続けられているけれど、あまり食べられずに痩せていく奈緒子さんを見かねて、近所の人たちが食べ物を持ち寄ってくれるようになりました。
仕事に集中していると、いつの間にかカウンターに定食が置かれてる。そうかと思えば、おにぎりやミカン、しまいには乾麺まで。
みんな口々に「食べてれば大丈夫だから」と、カウンターに食べ物を絶やさなかったと話します。
奈緒子さん:
「不思議と食べても食べても痩せてしまって、きっと全然栄養を吸収できていなかったのかもしれません。そんな私を見かねて、お裾分けは、日に日に増える一方でした」
甘えるのは、決して悪いことじゃない
奈緒子さん:
「そのうち『今夜は何が食べたい?』と電話がかかってくるようになって、とくに食べたいものがないと答えると、『じゃあうちの次男が餃子を食べたいって言ってるから、餃子でいいね!』と、電話が切れるんです。
それからまもなくして、今度は『お盆持って取りに来て』と、電話がかかってきて。言われるまま取りに行って、そのまま店に持ち帰って頂く毎日。
おかげでだいぶ体重も戻ってきて、とにかく食べることが大切なんだって、誰かに甘えてもいいんだって、皆さんに教えてもらった気がします」
悲しみに沈んでいるときでも、まわりの人にいっぱい助けられて、少しずつ笑えるようになっていった奈緒子さん。
つづく3話では、ご近所さんやお客さんに支えられながら過ごした1年を経て、今どんな気持ちでいるのかを伺います。
(つづく)
もくじ
【写真】鍵岡龍門
山岸奈緒子さん
岐阜県出身。動物好きで、7年前に自分でデザインした動物柄の布でオーダーメードの服を作る洋服店「OWL(アウル)」を目黒に開く。動物柄のほかにも、紳士服地を使ったものも。レディースにメンズ、子供服やバッグまで、幅広くオーダーに応えている。インスタのアカウントは@owl_meguro。http://owl705.blog.fc2.com/
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