【ありのままでいたくても】第2話:自分をよく見せるのは、悪いことじゃない。

編集スタッフ 奥村 編集スタッフ 奥村

久しぶりに行った銭湯がきっかけで、つい強がってしまう自分に気づいたわたし奥村。

そんな自分との向き合い方を考える今回の特集では、詩人の文月悠光(ふづき ゆみ)さんにお話を伺っています。

 

「ちゃんとしてる」と思われたくて

第1話で、本当は臆病なのに強いふりをしてしまうと話していた文月さん。そんな経験はわたし奥村にもあります。

強がってしまう自分のことを、文月さんはどう受け止めているのでしょうか?

文月さん:
「わたしは新人賞を頂いた16歳の時にデビューして、高校生の時、はじめての詩集を出しました。

10代の頃から年上の人に囲まれていたから、ちゃんとしていなきゃという思いが、いつも頭の中にあったんだと思うんですね。

頼りない自分を少しでも晒したら、『若いからこんなこともわからないのね』と足を引っ張られる気がして。若さに甘えていると思われたくなかった。

当然、年齢や人生経験では、周りの大人たちに追いつけない。だから、せめて一人前らしく振る舞わなきゃと。そう思って強がっていました」

 

背伸びしてしまう自分を、肯定できたら

文月さん:
「あの頃は、自分がどんな風に見えているか、周りの目がいつも気になっていて。自意識が強すぎて、すごく生きづらかった記憶があります。

でも、今振り返ってみると、当時の自分は頑張って『背伸び』していたんだと思うんです。

背伸びを続けていたからこそ、後から実力もついてきて、今の自分に繋がっている。そう捉えたら、ネガティブな思い出ではなく、必要な経験だったんだと肯定できるようになって。

当時より大人になったとはいえ、これからも背伸びは続けてしまうと思うんです。でも、きっとまた数年先に、今の背伸びも無駄じゃなかったと思える時がくる。そう信じられるようになりました」

 

自分をよく見せたい気持ちは、なくせないもの

文月さん:
「自分をよく見せたいという気持ちは、大人になった今でもあります。

たとえば恋愛なら、好きな人に嫌われたくないから、よく見られたいとつい背伸びをしてしまう。

仕事相手の方に対しては、詩人として言葉を丁寧に扱って話す自分がいるだろうし、気を許せる友人に会うときだって、自然体らしい砕けた雰囲気を演じているかもしれません。

人は人間関係に応じて、『自分をこう見せたい』という自意識の方向性や、振る舞い方を自然と切り替えるものだと思うんです」

文月さん:
「わたし、学生の頃から日記を書いてるんですね。落ち込んだ時やモヤモヤした時、紙のノートに気持ちを綴っていて。

自分しか読まないその日記の中でも、自分が強がっていることに、後から読み返して気づくことがあるんです。

たとえば、本当は心が弱っているのに、頑張るしかないとか、自分を信じて生きなければとか、強い言葉で自分を奮い立たせている。

自分に対しても虚勢をはってしまうんだから、他人に対して強がってしまうのは、自然なことなのかもしれません」

 

いつも「素の自分」でいたいわけじゃない

文月さん:
「それに、いつも素の自分でいることがいいことなのかも、実はわからないですよね。

たとえば今日は取材していただくので、好きな服を選んで、普段より張り切ってメイクをしました。

それだって『背伸び』なのかもしれないけど、わたしにとっては必要なことです。そうすることで気持ちが上がって、自分に少し自信が持てるから。

いつでも素の自分でいたいわけじゃない。背伸びしたいときは、思いっきりしたっていいと思っています」

 

もしも、強がることが辛くなったら

文月さん:
「でも、ときには無理をして自分を偽ってしまうこともありますよね。

たとえば、本当は傷ついてるのに、その気持ちにふたをして傷ついていないふりを続けていたら、だんだん辛くなってしまうかもしれません。

自分にとって必要な強がりもあれば、負担になってしまう強がりもある。『強がる、強がらない』とスタンスを1つに固定するのではなく、いまの自分がどちらに傾いているか観察しながら、丁度よく調整できる状態が理想的かもしれません」

「強がる」という言葉に、弱い自分をごまかしているような、後ろ向きな印象を抱いていたわたし奥村。

でも、わたしにとって必要な強がりもあるんだと思えたら、その自分も肯定できる気がしてきました。

最終話では、背伸びすることが負担になったときのやめ方や、折り合いのつけ方について伺います。

(つづく)

【写真】濱津和貴

【撮影協力】吉祥寺 弁天湯(東京都武蔵野市)


もくじ

第1話(8月7日)
どうしてわたしは、強がってしまうんだろう。

第2話(8月8日)
自分をよく見せるのは、悪いことじゃない。

第3話(8月9日)
強がりは、生きていくために必要なことなんだ。

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文月 悠光

詩人。北海道出身。中学時代から雑誌に詩を投稿し始め、16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年生のときに発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞する。近著では、2018年に自身2作目のエッセイ集『臆病な詩人、街へ出る。』を出版。

 

▼文月悠光さんの書籍はこちら

 


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