【家と仕事ともうひとつ】vol.3:何を考えても、何も考えなくてもいい時間。お客さま係石井編
ライター 片田理恵
「家」と「仕事」と同じように大切で、けれどそのどちらとも違う、あなたにとっての「もうひとつ」を教えてください。そうお願いをして、クラシコムスタッフの皆さんとおしゃべりをさせてもらうことになりました。集まって座談会をするのではなく、おひとりずつと、じっくりと。
「もうひとつ」って、どうもとらえどころがないんです。まるで行き先を決めない旅のよう。家族でレジャーを楽しむとか、仕事を円滑に進めるための出張とは違う、明確な目的に縛られない旅。なかなか実現はできないけれど、思いつくまま気の向くまま、いつかそんな旅に出てみたい。私たちの中に密むそんな欲求が「もうひとつ」であるような気がします。
今回おしゃべりをご一緒するのは、お客さま係・石井さん。クラシコムへ入社して3年目、5人の子どもを持つお母さんでもあります。「仕事と子育てで相当忙しいはずなのに、いつも余裕を感じさせる佇まいだから」というのが、前回登場してくれた遠藤さんからの推薦理由。取材はオンライン会議システムを利用し、お子さんたちの元気な声が時折交じりつつのインタビューとなりました。
“
私にとってのもうひとつは、「個」でいられる時間ですね。何を考えても、何を考えなくてもいい。ひとりきりの空間で過ごすこと以上に、思考が自由でいられる時間が大事だなと感じます。
そういう意味で最も解放されているのは、夫のパートナーとして過ごしている時。頭で思いついたことをそのまま口に出せるし、多少の失言があったところで関係性が揺らぐわけではない。そんな相手はほかにいませんから。だから少し長めの出張に出られると、モヤモヤが溜まって困ってしまう(笑)。
「家」でのお父さん、お母さんとしての役割・関係性ももちろん持っていますが、それとは違う、ふたりでいるんだけれど、だからこそ個人でいられるという感覚があります。素顔の自分でいられて、かつ、そんな自分を肯定できるのは、夫を通じて自分自身を見つめられるからなのかもしれない。
かといって性格が似ているとか、価値観が同じだなという認識はないんですよ。大きく方向性はずれていないなというくらいの感覚だから、逆にちょうどいいのかも。遠すぎず近すぎず、そういう意味でも得難い存在だなと思います。
パートナーとして夫と一緒にいる時の私が、一番好きな自分ですね
”
私は最初、おふたりは旅のパートナーなのだろうと思っていました。あてのない旅をともにできる唯一の相手。でもインタビューが進むにつれて、印象が変化したのです。石井さんにとってご主人は、旅に送り出してくれる、そして帰りを待っていてくれる相手なのではないでしょうか。
家も仕事も大事だけれど、時には解放されたいという気持ちが誰にもあります。そんな「もうひとつ」の私をそのまま受け止めてくれる存在があることが、大きな安心と自信につながっている。遠藤さんは石井さんのそういう気持ちを感じ取っていたのかもしれません。
家と、仕事と、もうひとつ。次回は石井さんの推薦で、また別なスタッフさんとのおしゃべりをお届けします。
Photo:鈴木静華
ライター 片田理恵
編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things.」「天然生活」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。
お客さま係 石井
クラシコムに入社して3年目。39歳。北欧、暮らしの道具店のお客さま係として、お客さまともっと深くコミュニケーションするには?と日々模索中。忙しさに追われた時の心の支えは漫画『スラムダンク』のセリフ「まだあわてるような時間じゃない」。
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