【もっと雑貨のはなしをしよう】贅沢ってこういうことなのかも。日用品愛好家が選んだバブーシュ
渡辺平日
いつの間にか夏が終わり、さっと幕を引くみたいに秋がやってきた。「……いったい夏はどこへ行ってしまったんだろう?」と僕は思う。今年はほとんど外出しなかったからなおのことそう感じる。ほんとうにどこへも行けなかった。
いや、一度だけ取材で遠出したんだった。「遠出」と言っても横浜から小田原への移動なのでささやかなものだけど、それでもあれはいい息抜きになったな。
取材先ではいろいろな店舗を見てまわったが、特に「ギョサン(漁業従事者用サンダル)」と呼ばれるアイテムが興味深かった。
実直な作りで、機能面も申し分なく、さらに値段はごく手頃。まさに日用品の鑑だ。ひとつ買い求めようとしたが、一番大きいサイズでもやや窮屈で、泣く泣く購入を諦めた(僕の足は27cmくらいと特別大きくはないけど、甲が広いせいで履けるものが限定されるのだ)。
今回はダメだったが、外履きは種類が多いからまだ救いはある。問題は室内履きだ。ちょっと足が大きいだけで選択肢がぜんぜん無くなってしまう(同じような悩みを抱えている人って多いのではないだろうか)。
▲バブーシュとはモロッコの伝統的な履物のこと。踵を踏んで履くのが特徴で、スリッパとはまたすこし異なる使い心地となっている。
だから〈KURASHI&Trips PUBLISHING〉のバブーシュに出会えたときは心底嬉しかった。大きくても27cmまでのアイテムが多いなか、このバブーシュは27.5cmまで対応している。この「0.5cm」のおかげでゆったりと履けるのだ。
「ほかにもほかにも」と語り出したい気持ちを抑え、まずははじめて使ったときの感想からふりかえっていく。
8月15日(土)
結論から言うとこれは大正解
「2020年の夏は猛暑になります」と気象予報士がテレビで言っていたが、ほんとうに今年の暑さは末恐ろしいものがある。
幸いにも春先から自宅で働いているので、通勤時に太陽の光にさらされる心配はなくなった。……でも部屋が西南向きだからすっごく暑い。なにもしなければ余裕で40℃を超えてしまうだろう。
しかたがないのでずっと冷房をつけているが、これはこれで「足が冷える」という新たな問題が生じる。特に朝晩はけっこうキツい。
「ブランケットを用意すればいいじゃない」とあなたは思うかもしれませんね。でも僕はあまりそれに頼りたくないのです(仕事中はせかせかと動くので、ブランケットがあると邪魔になってしまうのだ)。
そこで秋冬用のバブーシュを緊急登板させることにしたのだが、結論から言うとこれは大正解だった。特に薄手の靴下と組み合わせると気持ちいい。夏の寒さ対策の定番スタイルになりそうだ。
▲側面にはロゴがさりげなく刻印されている。気づいたときはなんだか嬉しい気分になった。
デザインもかなり気に入っている。バブーシュはもともとは伝統的な履物だから、タッセルやスパンコールで装飾しているものも多い。もちろんそれはそれで素敵だ。でも、シーンやシチュエーションが限定されるので使いどころがなかなかむずかしい。
一方、このアイテムはバブーシュの形状を踏襲しつつ、全体的にはごくシンプルに仕上げている。「ハレ」というよりは「ケ」のための道具という気がする。
素材にはフェイクレザーを採用しているようだ。シボもしっかりと再現されていて高級感がある。天然皮革のアイテムも魅力的だけど、合成皮革のほうがケアが簡単だし、なにより価格がまったく違う。そういう意味でもこのバブーシュは「日用の道具」という感じがして、気負わず履くことができる。さあ今日からよろしくたのむね。
8月23日(日)
これは前々から感じていたことなんだけど
▲春夏用のスリッパとして活躍しているのが、以前にも紹介したfog linen workのスリッパ。サラッとした肌触りが心地よく、ついつい裸足で履きたくなる。ちなみにLサイズは28cmまで対応しているので、僕のように足が大きい人にもおすすめです。
朝晩はバブーシュ、それ以外は麻のスリッパというローテーションがうまく機能し、非常に快適に過ごせている。
これは前々から思っていたことなんだけど、「贅沢」にはいろいろな意味があるんだなと気づいた。ひとつは、とびっきりスペシャルなアイテムを、長く大事に使うこと(これはイメージしやすいと思う)。
そしてもうひとつは、気に入った道具をいくつか用意し、状況にあわせて使い分けていくこと(この場合、アイテムはとびっきりスペシャルじゃなくてもいい)。
たとえば、カーテン。ふつうは付けっぱなしにするところを、ある友人は「夏は麻、冬は綿」という具合に、季節によって細かく付け替えていた。それってとても素敵だと思う。僕も広い部屋に引っ越したらマネしてみようかな。
9月14日(月)
『Rubber Soul』を聴きながら……
バブーシュは踵を立ててルームシューズみたいに履くこともできる。そのぶんタイトになるので入らないだろうと思ってたけど、試してみたらなんとか履くことができた。
踵を踏むスタイルは気軽に使えていいんだけど、「カポカポ」という音が気になることがある。なので片付けをするときはルームシューズスタイルを採用することにした。
▲旅行などに便利なオリジナルの巾着が付属。外で使わない場合は小物入れとしても使用できる(ドライヤーを入れるのにちょうどいいサイズ感です)。
それにしても……。これぐらいの季節に窓を開け放って、ビートルズの『Rubber Soul』を聴きながら部屋の掃除をすると、ほんとうに幸せな気持ちになれるものです。
つい、この気候がずっと続けばいいのにと願ってしまう。それが無理だと分かっていても(願いむなしく、窓を開けると肌寒さを感じる季節がやってきました。でも足元はポカポカと暖かく、これはこれで幸せだなと感じます)。
ところで前回の話の続きなんだけど、登山のための体作りは順調で、体重もうまい具合に落ちています。友達に「ちょっと痩せた?」などと聞かれるのって嬉しいし、モチベーションもグンと向上する。
聞いた話によれば、痩せると足のサイズも小さくなるらしいですね。いつかあの素敵なギョサンが履ける日が来ればいいなと思う、今日このごろです。
本日登場したアイテム
【イラスト】イチハラ マコ
【写真】渡辺平日
渡辺平日
日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『和樂web』『goodroom journal』など。Twitterアカウントは@wtnbhijt。
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