【スタッフコラム】わたしをすっぽり受け止めてくれる、ラクダ色のソファ
編集スタッフ 津田
この冬のはじまり、ぴゅーぴゅー北風が吹き始めた頃に、すこし大きいソファを買いました。
わたしが横になるとすっぽり収まるくらいの幅で、短めの木製脚と、ラクダのような優しい色をしたコーデュロイ生地がチャームポイントです。
朝起きたら、やかんでお湯を沸かしつつ、みかんを食べてぼんやり。夕飯が終われば、お酒とおつまみをもってごろごろ。
特別なことはひとつもない。でも大好きなソファがあれば、家でのなんてことない時間がまるで映画のワンシーンのよう。朝晩ソファにうずくまって、ブランケットにくるまれていると、こういう毎日ってわるくないなあと思うのです。
というのも振り返れば昨年は、明日から仕事始めという日にジムで左膝を痛めてしまうところから始まりまして。
よくよく検査したら、高校のバレーボール部時代の怪我で、もう完治しているつもりでいたのですが、半月板と前十字靭帯を損傷しているとのこと。
スポーツニュースでしか見たことのない、まるでプロのアスリートのような展開に我ながらビックリしましたが、筋力も関節も回復が期待できるから治療しましょう、との診断で、あれよあれよという間に手術と2週間ほどの入院生活を計2回、経験したのでした。
手術のあとは、リハビリに励む日々。足を曲げるのも伸ばすのも想像よりずっと大変で、なかでも退院後1ヶ月半ほどの松葉杖生活のあいだは、必需品を買いに行くのも、家事をするのも一苦労。
おかげさまで、いまは日常生活は滞りなく過ごせるようになりましたが、家族や友人にほんとうにたくさん助けられました。
そんなハプニングを経験をして心底思うのは「無理はできないんだなあ」ということ。
頑張りたくても、体力や気力が追いつかないことがある。前向きでいたくても、ときにイライラしてしまうこともある。人に迷惑をかけたくないのに頼らざるを得ない。そういう自分が情けなくなったことが何度もありました。
たびたび落ち込んだり、焦ったりするわたしを見かねた友人が「ゆっくりじわじわ進むのって難しいものだよ〜、自分を甘やかしてあげて」と声をかけてくれて。
そのときはピンと来なかったのですが、一年という時間を経てみると、他ならぬ自分くらいは、できない自分を受け入れてあげてもいいんじゃないか、という気になってきました。
決して開き直るのではなく。このままじゃダメだと否定するのでもなく。至らないところはあるし、変わるべきところもあるけれど、わたしはわたしだとただ寄り添って受け止める。一番近い距離で。
わたしを丸ごとすっぽり包んでくれるソファに身を委ねていると、そんなやわらかな気持ちが湧いてくるような気がします。
ひょっとすると、これまで長いこと「このままじゃいけない」と、そのつもりはなくとも自分に無理をさせていたのかも。頑張るのはいいけど、自分を否定してまですることじゃない。そんなふうに思えることが増えて、気持ちがラクになりました。
特別じゃなくていいから、優しい気持ちでいたい。
なんてことない日の朝と夜。ラクダ色のやわらかなソファで過ごす名もなき時間が特別に感じるのは、そんな決意を静かに思い出させてくれる瞬間だからなのかもしれません。
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