【人生のまんなか】第3話:50代で不安がなくなったのは

編集スタッフ 寿山

40代は、どんな景色が見えるのだろう?

そんな好奇心を膨らませていたとき、『自分に還る』という、50代の方の暮らしと仕事の話をまとめたインタビュー本に出合いました。

魅力的な6人の女性たちが、人生のまんなかを折り返して、どんな葛藤を抱えていて、どんな風に今の自分と向き合っているか。本のはしばしからメッセージを感じて、著者である石川理恵(いしかわ りえ)さんにお話を伺っています。

1話目では、編集者になるまでの奮闘や、走り続けた30代のお話を。2話目では、自分を見つめなおしながら寄り道した40代のお話を。最終話の今日は、迷いながら迎えた50代について伺います。
1,2話目はこちら

 

好きなことだったのに、嫌になるのはなぜ?

40代の寄り道が楽しすぎて、フリーのライターには戻りたくないと思っていた石川さん。それでも仕事を再開したきっかけは何だったのでしょう?

石川さん:
「友人の編集者から、ムックの取材を頼まれたことがきっかけです。スケジュールを組むのが上手な方で、丁寧に取材して、じっくり書くことが出来ました。それで人の話を聞いて文章を書くって、こんなに楽しいことだったんだと、改めて感じたんです。

私はスケジューリングが苦手で、仕事をうまく回しきれずに自分の首を絞めていたのかも。好きなことをやっているのに苦しい感覚が常にありました。

一度離れたけれど、やっぱりこんなにやりがいのある仕事なんだと気づいてしまったので、書くことを楽しめるペースで続けられる道がないか。枠組みを考えて、もう一度やってみようと思ったんです」

 

コンプレックスを克服できたのは

それまでずっと、自分は書くのが遅い、スケジューリングが下手だというコンプレックスを抱えていた石川さん。派遣として新しい環境に身をおき、会社組織で働くうちに、自分の仕事でも「スムーズに回すシステム」を考える必要があると気づきました。

石川さん:
「仕事がパンクしたり、1年間休んだり、会社員として働いたり。40代で思いつくまま寄り道した後、私は書くのが遅いのではなくて、ゆっくり書くことが好きなんだと、思い直せたんです。

どこかに『好きな仕事をしていても、稼げなければ半人前』みたいな呪縛があったのだと思います。それが少しとけたというか。私の場合は、取材で面白い話を聞いたら、しばらくその人のことを思いながら、暮らしていたいんだと気づいたんですよね。

生活するための収入を確保しつつ、好きなペースで書き続けるためには、書籍は年に1冊と決めて、雑誌の仕事はこのくらいなど。枠組みを決めたらいいのだと、ようやくわかりました。

今もまだ模索の途中ではありますが、前より自分のことがわかった気がします」

 

50代でようやく、自分を信じることができた

50代になった今、迷いや不安を感じなくなったのも、寄り道のおかげかもしれないと石川さん。

石川さん:
「40代の迷いの原因を紐解いてみたら、『社会で通用しなくなる』ことが怖かったんだとも気がつきました。それで無意識に勉強したり派遣でいろいろな仕事を経験したりして、社会で生き抜く方法を探していたんだと思います。

結果的に元いた場所に戻ってきたけれど、いろいろ経験して視点が増えて『きっと、何とかなる。時代が変わっても、私は対応していける』と、ようやく自分への信頼みたいなものが生まれました」

 

なりたい自分になる。その目標を手放したら

石川さん:
「今は、どんな仕事がしたいというよりも、大切な人たちを大切にできる暮らしを送れたらいいなと思っています。家族はもちろん、いろんな失敗を共有してきた友人、こんな私との仕事を面白がってくれる人。素の自分と一緒にいてくれる人がいるのって、人生で一番うれしいことです。

もう『なりたい自分』になるために、自分のキャパシティを超えるような働き方はしないと決めました。仕事が好きなことに変わりはないですが、大切な人たちと、どんな毎日を過ごしていけるかをちゃんと味わいたいです。

もしかしたら時代が変われば、また価値観も少しずつ変わるのかもしれないけれど。わたし昔から『変わらない自分』を持ちながら、『変わっていける人』が好きなんです。私もそうやって生きていけたらいいなと思います

 

きっと皆「居心地のいい場所」を探している

著書の帯に「30代の焦りも、40代の迷いも、ちゃんと私に積み重なっている」という石川さんの言葉があります。今日お話を聞いてみて、誰に教わるわけでもなく、自分の足で歩いてきたからこそ、体の奥底から放たれた言葉のように感じました。

「自分が心地よい場所」を探しながら毎日暮らしていくのは、決して簡単なことではないように思います。それでも、歩みを止めなければ、いつかはたどり着ける。もし「心地よさ」の尺度が変わっても、また探せばいい。そんな希望を石川さんから受け取りました。

暮らしにも仕事にも、自分だけの居場所は、きっとあるのです。

(おわり)

 

【写真】佐々木里菜

 

もくじ

 

石川理恵

1970年東京都生まれ。ライター・編集者。雑誌や書籍でインテリア、子育て、家庭菜園などライフスタイルにまつわる記事、インタビューを手掛ける。近著に『自分に還る』人の気持ちが最大の関心ごと。生まれつき障害のあった三男が他界したことをきっかけに、通信制の大学で心理学を学んだ。現在、心の本屋をオープンすべく準備中。http://hiyocomame.jp

 

 


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