【本屋の本棚から】後編:肩の力を抜きたいときに。気持ちをゆるめる本4冊(福岡・ナツメ書店)

編集スタッフ 松田

本屋に訪れ、本棚をゆっくり眺める時間そのものをお届けできたなら。そんな思いで企画した特集。

前編に続き、今回は福岡市・西戸崎にあるナツメ書店の奥 由美子(おく ゆみこ)さんに、今の気分に寄り添うテーマで本を選書いただき、特別な本棚をつくっていただきました。

前編はこちら

本日選んでいただいた本棚のテーマは、「肩の力を抜きたいときに。気持ちをゆるめる本」です。

それでは本屋さんでの時間を、ゆっくりお楽しみください。

 


今日の本棚
「肩の力を抜いて、
気持ちをゆるめたいときに」


出会いの季節に胸を踊らせつつも
新しい時間の流れやたくさんの情報に
はやく慣れようと、
知らず知らずのうちに
肩に力が入ってしまうもの。
自分はうまくやれているだろうか、
漠然と不安な気持ちに
包まれてしまう夜もあるかもしれません。
そんな日の夜に寄り添うような
ふふっと笑えて気持ちをゆるめられたり、
眺めるだけで心が落ち着いたり。
限られた時間の中でも
大切なことに立ち戻るきっかけを
与えてくれるような
そんな本を選んでいただきました。

【本棚リスト】
『ふたりは しんゆう』 アーノルド・ローベル 文化出版局
『ともだちは海のにおい』 工藤直子 理論社
『フユウ・ライフ』 おたぐち タバブックス
『日常の中に生まれてくるある瞬間について』安達茉莉子
『新しい日の真ん中に』児玉由紀子
『歩きながらはじまること』⻄尾勝彦 七月堂
『カステーラのような明るい夜』尾形⻲之助 七月堂
『ずっとここにいた』山口法子
『Rêverie 日曜日の夢の始まり』上柿絵梨子
『そしてまた花束に』清水美紅 SUNNY BOY BOOKS
『BIRD』トラネコボンボン  中⻄なちお 書肆サイコロ
『NIGHT ON EARTH』MISSISSIPPI

この本棚の中から、特に奥さんが今オススメしたい本についてコメントいただきました。

 

お茶が好きないるかと、ビールが好きなくじらと

奥さん:
「こちらは、ナツメ書店でも定番の本の一冊として、お店にお越しいただくお客様にずっとご紹介させていただいてきた本です。

お茶が好きないるかと、ビールが好きなくじらの友情の物語。いるかとくじら、それぞれに個性があるのですが、自分とは異なる相手の考えを受け入れつつ、自分のこともきちんと大切にする。そんなほどよい距離感でやりとりされるやさしい関係に、あたりまえの日常や近くにいるひとを大事にする、そんな生き方を自分もしたいなと自然に思えます。

詩人・工藤直子さんのまっすぐで美しい日本語に、長新太さんのシンプルな線画が寄り添って。全体的に余白のある構成で、読んでいると海を眺めているときのように、心穏やかになります。

わたし自身は小学校2年生の頃に初めて読んだのですが、小さな子への読み聞かせにも、ひとりで読む大人にも子どもにもおすすめしたい一冊です。短いお話や詩がたくさん入っているので、夜のおやすみ前の時間に、少しずつ読んでいただいても」

『ともだちは海のにおい』 工藤直子 理論社
(※この本には新装版がありますが、奥さんご自身が子どもの頃に繰り返し読んでいた版に思い入れがあり、お店では旧版をご紹介しているそうです)

 

頭の中が、整頓されていくように

奥さん:
「次にご紹介するのは、詩人・西尾勝彦さんの過去の5つの詩集をまとめた一冊。現代詩の中でも読みやすく、詩にあまり馴染みがなくてどれから読んだらいいかわからない、という方にもオススメです。

奈良の里山に暮らしている西尾さんの言葉は、独特の空気感をまとっていて。何気ない言葉の連なりのようでありながらも、風のそよぎや光のきらめきが今にも目に浮かぶような詩なんです。純度の高い言葉に触れて、頭の中が整頓されていくような感覚もあって。なかなかこの魅力をお伝えするのが難しいのですが、気になった方はぜひ手に取って触れてみていただけたら嬉しいです。

装丁は焼きたてのパンをイメージしたものなのだそう。詩の中に登場する、架空のパン屋さんのショップカードをイメージしたしおりが入っているという仕掛けも素敵です。

最初から最後まで読む時間がなくても、ページをパラっとめくって、そこにある言葉を味わうという楽しみ方もできる一冊です」

『歩きながらはじまること』⻄尾勝彦 七月堂

 

かわいさと面白さが詰まった、やさしい世界

奥さん:
「大阪在住のイラストレーター・おたぐちさんによる、タバブックスのwebサイトでの連載に加筆した4コマ漫画・イラスト集です。

季節や仕事がテーマになっている4コマ漫画とイラストなのですが、視点がユニークで面白いんです。一見シュールな展開にも、”不器用だけど愛がある”やさしい世界が広がっているのが魅力で。ふしぎな仲間たちが愛おしくなります。忙しいときや疲れたときにもずっと見ていられる、きっとふふっと笑ってしまう一冊です。

柔らかい印象を与えてくれる、ネイビーで印刷されたブックデザインも素敵です」

『フユウ・ライフ』 おたぐち タバブックス

 

所在ない小さなものに、居場所をつくるということ

奥さん:
「最後は、当店でも原画展をしてくださった東京在住の画家・山口法子さんの作品集です。山口さんはここ数年、 “所在ないもの” をテーマに、家にあるボタンや道端の小さな石ころのような、身の回りにあるけれど気に留めていなかったものに目を向けて作品づくりをされています。

作品には、 “所在ないもの”が発見された瞬間の、光が差すような景色が描かれています。楽しい気持ちだけでなく、さみしさや切なさといった、相反するような感情もひとつの絵に同時に存在している、そんな世界観に引き込まれます。

作品に添えられた山口さんの文章にも、ハッと共感する部分もあり心惹きつけられます。暮らしの中で、山口さんの中に芽生えた心の動きに丹念に向き合われた結果が、私たちの目の前に絵として現れているのかもしれません。

所在ないものに居場所をつくること、それは自分自身の心の居場所をつくることなのかもしれない。そんなふうに感じる作品です」

『ずっとここにいた』山口法子

***

つかの間の本屋さんでの時間、いかがでしたでしょうか?

本との出会いにワクワクしたり、癒やされたり。まるで本当に本屋さんにいるような、居心地のよい時間を少しでもお届けできていたら、とても嬉しいです。

【写真】いわい あや

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ナツメ書店
Sleep Coffee and Roaster.

福岡・西戸崎の海辺の町で、築100年の元時計店を改装した書店・ロースタリーを夫婦で営んでいる。由美子さんが書店担当、雄祐さんがコーヒー担当。選書は、本を好きになるきっかけになるような本を選ぶように心掛けているそう。毎朝7時に「朝のコーヒー 今日の本」というテーマで、youtubeのライブ配信も。
HP:https://natumesleep.com  instagram:@natumebooks
open|金・土・日 12:00-19:00

▶︎この特集でご紹介した本について
ナツメ書店さんのHPでもご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
https://natumesleep.net/


もくじ

 


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