【ベランダが好き】第3話:いつものごはんにうちのハーブを。気持ちまでおいしい食卓

ライター 片田理恵

イラストレーターの谷山彩子さんに、ベランダで植物の世話をする楽しみについて、お話を伺っています。

ベランダで過ごす時間を言葉にするなら「あそび」がしっくりくるという谷山さん。1話では自分らしい園芸を始めるきっかけについて、2話では最近のベランダでの過ごし方についてお聞きしました。

続く3話では、ベランダからの恵みを家の中でどう楽しんでいるかに注目。目にも舌にもおいしいアイデアを教えてもらいました。

1話目から読む

 

ベランダのハーブを使った、初夏のお昼ごはん

台所から漂ってくる、なんともおいしそうなにおい。オリーブオイルと、玉ねぎと、トマトも入っているような……? のぞいてみると、淡いオレンジ色のル・クルーゼがコトコトと心地よい音をたてて煮えていました。

今日の谷山家のお昼はイタリアの煮込み料理「カポナータ」に、豆の缶詰を使ったペーストとバゲット、そして自家製ドリンク。ベランダのハーブがたくさんとれるこの季節ならではのメニューです。

谷山さん:
「フェンネル、ローリエ、ローズマリー、タイム、ミント、バジル、イタリアンパセリ。ハーブって作る料理によってはぜひ使いたいと思うのに、そのつど買うのって大変でしょう? 食べきれないともったいないし。だから育てることにしたんです。

ベランダにあると、1枚だけ、ひと枝だけ欲しいって時にすごく便利。

苗を購入するのもいいけれど、私は生鮮食品として購入したものの残りを挿し木で増やしました。水を入れたコップにしばらく挿しておくと根が出てくるので、それを土に植えるんです。わりとうまく根付いて大きくなってくれることが多いんですよ」

 

ローズマリー、タイム、バジル。ハーブとひよこ豆のペースト

そんな自家製ハーブをたっぷり味わうために考えたという谷山さんのオリジナルメニューが、このひよこ豆のペースト。

ハーブのやわらかい葉や新芽を摘んできたら、ちぎったものをすり鉢ですって細かくします。そこに缶詰のひよこ豆とニンニクのすりおろし、アンチョビ、オリーブオイル、塩を加えて、豆をつぶしながら混ぜたら出来上がり。

谷山さん:
「新鮮なハーブはどれを入れてもおいしいし、もちろん複数種の組み合わせもOK。

私は豆をつぶしすぎない、ちょっと形が残るくらいの食感がお気に入りです。ここにクリームチーズを加えてディップのようにするのもおすすめ。パンやクラッカーにのせて食べてみてください。よく冷えた白ワインにもぴったりですよ」

 

じっくり2時間。野菜とマカロニのクタクタ煮込みにバジルを添えて

こちらがお待ちかねのカポナータ。ごろっと大きな野菜が入ったラタトゥイユとは逆の発想で、細かく切った野菜をとにかくクタクタになるまで煮込んで作ります。

今日入っているのは玉ねぎ、ニンジン、セロリ、キャベツ、ズッキーニ、そら豆、インゲン。切った野菜をよく炒めたら、水、トマト缶、マカロニ、コンソメを加えて火にかけ、時折かきまぜながら、2時間じっくりと煮たら出来上がり。

谷山さん:
「つい先日、この料理のプロセスをイラスト化するお仕事を担当したんです。作ってみたらおいしくて、わが家のレパートリーに加わったばかり。

その時にある野菜をなんでも入れられるのがいいでしょう? 熱々にチーズをのせてちょっと溶かした上に、ベランダから摘んできたバジルをのせて食べます」

 

夏の定番・はちみつレモンソーダに、ミントをプラス

最後は飲み物の用意。ベランダで過ごして乾いたのどをすっきりうるおしてくれるのは、谷山さんお手製のはちみつレモンです。皮ごとスライスしたレモンを保存ビンに入れ、そこにはちみつを入れて漬けて置いたもの。

甘酸っぱいやさしい味わいが、体も心もふうっと深呼吸させてくれるよう。これからの暑い季節にごくごく飲むのにぴったりです。

谷山さん:
「ミントの葉っぱがすごく元気がよかったから、思いついて入れてみました。手でちぎったものを数枚入れてかき混ぜたんだけど、これ、とってもおいしい! はちみつの甘さがミントでよりさわやかになります。ノンアルコール・モヒートね」

 

ベランダは『私の外』。ただの外とは違うから好き

おいしいお昼ごはんを堪能したら、しばしリビングでゆったり。

ふと窓辺に目をやると、先ほど料理にも使ったイタリアンパセリとフェンネルの花がグラスに入って気持ちよさそうに日光浴をしていました。

剪定した枝を処分せずにこうして飾って眺めるのも、谷山さんの楽しみのひとつ。

あまりに元気がよくて、1ヶ月を超えて長持ちすることもザラなのだとか。きっと植物も居心地がいいんでしょうね。

谷山さん:
「ベランダって『私の外』なんですよね。ただの外とは違うから好きなの。

そこにいるだけで気分転換になるし、こっちが関わっただけ応えてもくれる。生き物感があるっていうのかな。外出自粛の時も、それでずいぶん助けられました。

同じ家に住んでいる者同士、これからもほどほどに心地いい関係を楽しみつつ、私は私のリズムで、彼らは彼らのリズムで、暮らしていけたらいいなと思います」

(おわり)

【写真】メグミ


もくじ

 

谷山 彩子

イラストレーター。東京都出身。セツ・モードセミナー卒業。HBギャラリー勤務を経 て、フリーのイラストレーターに。雑誌・書籍の挿画や広告の分野で幅広く活躍。近著 に『文様えほん』『十二支えほん』(共にあすなろ書房)があ る。 https://www.taniyama3.com/

 


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