【やっぱり家が好き】後編:手を動かせば、暮らしが変わる。手作りのアトリエは、生活の楽しみが生まれるところ

ライター 藤沢あかり

インテリアの隙間にのぞく「その人らしさ」。テイストやテクニックにとらわれない部分だからこそ、住まいにはそれぞれに魅力があるのだと感じます。

今回お邪魔したのは、俳優の Q本 ( きゅうもと ) かよさん。9年前にリノベーションしたマンションに、夫とふたりで暮らしています。

その住まいを「生活の舞台」と話すQ本さんの、日常の楽しみ方をインテリアを拝見しながらうかがいました。キッチンを拝見した前編に続いて、後編ではリビングに設けたアトリエスペースをご紹介します。

前編から読む

ざっくばらんに、でもすっきりと。見せる本棚の作りかた

光と風が抜ける広いリビングは、フロアソファを間仕切りに、片側をアトリエとして使っています。このエリアの主役は、なんといっても壁一面の本棚です。

本をたっぷり並べたい。でも雑多にならず生活感をセンス良くまとめたい。見せる本棚をつくるときに、きっと誰もが悩むポイントかもしれません。同じくQ本さんも、思い通りの本棚はどうしたらいいのだろうと、何度も並べ替えして考えたとか。

Q本さん:
「壁一面の本棚があこがれだったんです。本も雑貨も並べたいし、夫婦で読むジャンルが違うので、おしゃれにまとめたくてもどこか生活感が出てしまうのが悩みですが、本棚はいつまで経っても未完成で、それも楽しいです。

ひとつ気づいたのは、背表紙が目立つ漫画の存在。これはコミック用のケースに入れて読むときだけ取り出すようにしました。本は気づいたら増えてしまうので、最近は遊びに来てくれた人に読みたいものを持ち帰ってもらっています。

本に限ったことではありませんが、やっぱり暮らしているうちにものは増えていきますよね。ものを買うのもつくるのも好きですが、案外『減らす』のも得意なのかもしれません。ときどき無性にスカッとさせたくなる気分がやってくるので、そのとき一気に手放すことも多いです」


仕事も趣味も、とことん!をDIYで叶えたアトリエまわり

中央に置いたデスクは、Q本さんの手作りです。重ねたりんご箱に手持ちの板を合わせ、オイルステインで塗装をしています。

Q本さん:
「ミシンや手芸、工作の道具などを出しやすく、しまいやすいデスクにしたくて改良しました。

以前使っていたデスクも自作だったんです。そのときはこの倍の広さで、大きな板を切るために電動丸ノコギリまで買いました。部屋中にブルーシートを敷き詰めて、騒音になるといけないので外壁工事のタイミングに合わせて、『いまだ!』って(笑)」

▲中を覗くとミシンや糸がジャストフィット。なんとも使いやすそう!

Q本さん:
「とにかく自分でとことん手を動かしたくなるタイプなんです。次の季節に向けてアクセサリーを作ったり、マクラメ編みにハマったり。ガラス工芸や絵を描くことも好きです。

イメージが湧いたらすぐ材料を買いに行っちゃうし、思いついたらすぐに作りたい。だから思い立ったその瞬間に作業を始められるアトリエを目指して収納を考えました」

▲トタンボックスは「無印良品」で購入。

デスク後ろに置いたたくさんのトタンボックスも、そのひとつ。1ジャンル1ボックスなら、ごちゃつきやすい材料や道具も一目瞭然。「作りたい!」の熱意をすぐにかたちにできます。

サイドに置いたキャスターワゴンには、トタンボックスに収まらないものをざっくり収納。これもQ本さんのお手製です。

Q本さん:
「100円ショップのすのこに、カットしてもらった角材を組み合わせて作りました。ガラガラ引き出せてたっぷり入るから、すごく便利なんですよ。

生活の中で、『ここに、これくらいの大きさの◯◯があったら便利だな』『こういうふうになっていたらもっと使いやすいのに』ということありますよね。わたしの場合は、最初に考えるのは『自分で作れるかな?』ということ。それがすごく楽しいんです」


自分で自分を満たせたら、毎日はもっと楽しくなる

Q本さんにとってのものづくりは、生活を楽しむために欠かせない日常の一部です。

Q本さん:
「漠然とした不安があるときほど、何かをつくりたくなるんです。

ものづくりって、今この瞬間の目の前だけに集中できます。そして、手を動かせばかならず、目の前にかたちとなる。そこに安心できるのかもしれません。

料理も手芸もDIYも、手を動かして何かをつくることは、生活を自分でつくっていくことにもつながりますし、達成感もあります。自分で自分を満たせるって、すごく大切だと思っているんです。

おばあちゃんになって、お出かけしたり遊びまわったりできなくなっても、自分でちいさくハーブや野菜を育てて、ごはんを作って、編み物をして……と、生活を自己完結する方法をたくさん身につけていたら、きっと楽しく暮らしていけそうです」


趣味は生活、暮らしは試行錯誤と研究の終わりのないくり返し

Q本さん:
「『趣味はなんですか?』って聞かれると、いつも『生活』と答えています。

ごはんを作って掃除や洗濯をして、そのくり返しが生活ですが、一つひとつに丁寧に向き合っているかと言われたら全然そうじゃないんです。基本はズボラでめんどくさがり屋だし、掃除も洗濯も苦手。

でも、その苦手なことをどうやったらラクにできるかと考えたり、もっと便利な道具はないか探したりと試行錯誤するのが楽しいし、生活を研究している感じなのかも。そしてその過程や研究自体も楽しいです。

家は、その生活の場所そのもの。この家にいると、やりたいことがどんどん湧いてきます。

だから、わたしは家が好きなんです」

たとえばこんな、冷蔵庫の前にぶらんと下がったペン一本。これも、Q本さんのちいさな研究成果です。

Q本さん:
「ああ、見つかっちゃいました(笑)。琺瑯の保存容器に、中身を忘れないようにメモするのに便利でぶら下げたんです。すぐ向こうに机があるんですけどね、そのちょっとが面倒だったりしませんか?」

自分にとって何が便利で、どこに置いたら気分良く過ごせるか。手を動かしてみて気づくことがたくさんあります。生活って、そんなことのくり返し。きっと終わりもないのです。

Q本さんのことばを借りれば、わたしたちは誰もが生活の研究者。終わりのない研究を楽しめたら、毎日はどんなに楽しくなることか!

大袈裟なことではなく、日当たりがいい方へ植物を動かしてみるような、ささやかなことでいいのかもしれません。そのちいさな工夫をつなぎ合わせていけば、どんな暮らしが生まれていくのでしょう。それは、手を動かした人にだけ見える景色です。

(おわり)


【写真】土田凌



もくじ

Q本 かよ

俳優。石川県能登半島出身。特技はソフトテニスで学生時代に全国優勝を経験。 30歳から芝居の道を志し、小劇場を中心に活動。独特の存在感を発揮し、近年では映画・ドラマ・CMにも活動の場を広げる。映画「火の華」(監督:小島央大)の公開も控えている。また自身でYouTubeチャンネルを開設し「今日もQK中」では演劇仲間とのゆるいトークを配信中。2017年に購入した中古マンションをリノベーションして夫と二人暮らし。

Instagram: @qmoto
HP: https://qchic.com/


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