【スタッフコラム】1年越しの想いが叶った、はじめての山小屋体験。
編集スタッフ 二本柳
(文・スタッフ二本柳)
あたため続けた山小屋への想い。
私にとって山の思い出といえば、林間学校で登った山登りくらいのものでした。
しかも山頂でお腹をくだすというトラウマ付き…。
山登りなんて義務でなければ二度とやらないだろうと、そんな風でした。
でもそんな私が、ちょうど今から1年くらい前に小林百合子さんの『山と山小屋』という本に出会い、じわじわと山小屋への憧れを持ち始めるようになったんです。
とはいえ重たい腰はそう簡単にはあがらずに、憧れの気持ちを心のうちにあたため続けること約1年。
ついに先日、八ヶ岳に佇む山小屋を目指して長野へと向かうことになりました。
まずは何ひとつ持っていない山グッズをそろえるべく、仕事帰りに銀座の「好日山荘」へ。
先月、特集『山へ行こう。』を担当したスタッフ津田が靴のサイズやバックパックの選び方について真剣にアドバイスをくれ、もう準備は万端です!
念願かなって、初めての山小屋へ。
そうして迎えた、人生はじめての山小屋体験。
これは、毎年おじいちゃんの家に遊びに行っていた夏休みを思い出すような、じんわりとあたたかいものでした。
美しい池に面する山小屋の周辺にはいつだって人の気配があって、誰かが誰かと談笑する声が聞こえてきます。
夜、何をするでもなく、登山客の笑い声が聞こえる食堂のあたりに座っていた私と友人たち。
そろそろ消灯時間だから、と部屋へ戻ろうとしたところ「チョコレートケーキ好きでしょ?」と腕を引き止められました。
正直まだ寝るのは寂しい(消灯は20:30!)と思っていたので、喜んでその場に残りました。
どうやらこの夜は、常連の登山客のお子さんが誕生日を迎える日だったようです。
その子のお誕生日を、その場に居合わせたみんなで一緒にお祝いしました。
嬉しそうにはしゃぐ子供の姿と、それを見守る大人たちの顔。それぞれの表情がチョコレートケーキのロウソクに照らされます。
そんな光景はあまりにあたたかくて、どこか懐かしい気持ちで胸がいっぱいになる夜となりました。
心地のいい静寂。
山小屋にはコンセントがありませんから、携帯の電池はその日のうちに切れてしまいました。
そうでなくとも電波がないので、どちらにせよインターネットは使えません。
友人が持ってきていたカメラのバッテリーも切れ、途中からは写真すら撮れなくなる始末。
でも、そんな静けさがとても心地よく感じられました。
人の声もあれば、鳥の鳴き声、川のせせらぎも。
決して「無音」ではないというのに、一方で、ものすごく静寂に包まれているような気分です。
それは言葉の通じない国で感じるような、静寂の心地よさとも似ていました。
以前、「なんで海外旅行から帰ってきたあとは、何もかもリセットされたような心地いい状態になるんだろう?」と考えたことがあるんです。
そしてそれは、どんなに雑踏のなかであっても言葉の意味が耳に入ってこない、ある意味で静寂に包まれているからじゃないかな、と結論づけたことがありました。
今回下山したあとも、そんな風に頭がリフレッシュされたすっきりした気分に。
「なんだ、海をわたれないときは山に登ればいいんじゃん」と、すでに次なる山登りへ向けて胸のウキウキ!が始まっています。
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