【はたらきかたシリーズ】フォトグラファー 鍵岡龍門さん編 第2話:100点以上の仕事をつくる「3つ」のこと。

編集スタッフ 塩川

2_1604_kagi_C1A4498写真 木村文平

フォトグラファー 鍵岡 龍門(かぎおか りゅうもん)さんの働き方について、全3話でお話を伺っています。

雑誌をはじめ、当店の特集でもおなじみの鍵岡さんの写真は、一目で見ただけで誰が撮ったか分かる「らしさ」を感じるもの。

ですが過去には「仕事の写真」と「自分らしい写真」の少しの隙間が生まれてしまったそうです。

2話目では、どうやって仕事を「自分らしさ」に近づけていったのかを紐解いていきます。


 

もくじ

 


 第2話:100点以上の仕事をつくる「3つ」のこと。


 

気持ちに応えようとして、苦しさを感じた4年目の仕事。

2_1604_kagi_C1A41771話目に続き、鍵岡さんのご自宅でお話を伺いました。

鍵岡さんがフリーランスとして働きはじめて4年目。仕事において自分らしさをきちんと出さないと、苦しいと感じる時期がやってきたそうです。

鍵岡さん:
「相手の要望の100点に応えようとするあまり、自分らしくない仕事が増えてしまったんです。体裁のいい仕事というか……。でも100点を求めるってことは、結局100点以内なんですよね」

自分らしくないのは辛いけど「100点を取れるんだったら、仕事としては十分じゃないのかな?」この時、私はそう思っていました。

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ですが鍵岡さんは、自分がいいと思えるものをきちんと撮れる仕事に、シフトしていきたいなと感じていた時期でした。

相手の求める100点は、もしかしたら自分にとっての100点ではないのかもしれません。

そんな折、転機になる2冊の本の仕事がありました。1冊目は仕事を通じて知りあった、友人作家さんの作品集を撮影するというもの。

本が仕上がる頃、友人と鍵岡さんの二人の名前で本を出したいという話が持ち上がりました。

鍵岡さん:
「その話はとてもうれしかったんです。ただ、自分の名前をその方と共に表に出して形にすると考えた時に、僕はここできちんと『自分らしさ』を出せたのかなと思ってしまったんです。

名前を出して本を作るということは、怖いですし責任を背負うことになりますよね。いままでの仕事は、クライアントである編集さんたちに写真の評価を求められる状態だったのが、全てを自分自身で評価しないといけない。

友人の作品をたくさんの人に届けたいと思って撮った気持ちも、出来上がった写真も良いものでしたが、いざこの本に僕の名前も出すとなった時に『僕はきちんとの名前が出るほどに、責任を取れたのだろうか?』と何かが悔しく感じたんです。

最終的には申し訳なさを感じてしまい、名前を表に出すことを断ってしまいました」

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自分自身を客観的に見つめるのは、実はとても難しいこと。自分の名前で仕事をし責任を背負う怖さは、駆け出しの編集者の私でも痛いほどわかります。

本当に心から自分がいいと思えないと、後々もずっと悔いが残っていまう。会社という組織にいても、フリーランスでも、それはどんな仕事にも通じることだと思います。

仕事には時間にもお金にも期限があります。その限られた中で、いかにベストを尽くし形にするか。それだって大事な要素です。

 

自分がいいと思ったことに、きちんと責任を持ちたい。

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自分らしさってなんだろうと悩んでいた時期に『みんなのコーヒーブック』(エンターブレイン)というムック本の仕事が、同時に進んでいました。鍵岡さんは取材の撮影から、コーヒーツールなど物の撮影まで、1冊まるごとを担当しています。

撮影を進める中で「自分がいいと思ったことを、きちんと責任を持って伝えたい」という想いが、はっきりしてきたそうです。そしてこの頃からやっと「のびやかに写真を撮れるようになってきた」と鍵岡さんは語ります。

完成した本をめくると、その場の空気を感じる印象的な写真と、随所に散りばめられた遊び心。鍵岡さんの今のスタイルを作った、転機の1冊になりました。

悔しさから自分をみつめ、責任を持って楽しめたことを「仕事」としてきちんと形に残した結果『みんなのコーヒーブック』を読んだ複数の編集さんやデザイナーさんから声がかかり、少しずつ自分らしい仕事ができるようになってきたそうです。

 

100点以上の仕事を生み出す「3つ」のこと。

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インタビューをしていくうちに、鍵岡さんが今の働き方をつくる上で、ポイントになるエピソードが3つありました。

どれも「なるほどな」と膝を打つことばかり。私自身の学びにもなったので、ご紹介したいと思います。

Episode 1. 師事した人がいないからこそ、沢山の人を見て学ぶ。

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鍵岡さん:
「僕はいわゆる一般的なフォトグラファーのなり方みたいに、誰かのアシスタントにしっかりついて、そこから独立したわけではないんです。師事していた方がいないというか……。

だけどその分、ロンドンでのスタジオマンや、様々なフォトグラファーのアシスタントをしてきたので、色んな人の働き方を間近で見れたのが、いい経験になっていると思います。

その時感じたのは、いい写真を撮る人って現場の緊張感をコントロールしているんです。わーっとたくさんしゃべって現場を盛り上げている人もいるし、黙って凛とした空気を作りながら撮影する人もいる。

そうやって自分で空間を作りながら撮影する姿を見るのは、すごく勉強になりました」

いろんな人を見て学ぶ。それは、どんなことにも取り入れられるように思えました。会社の先輩や同僚はもちろん、家族や友人からも学ぶことはあります。

学ぶ要点を絞り、たくさんのパターン見ることによって、さらなる「気づき」が生まれるのではないでしょうか。

 

Episode 2. いいと感じたことを、まず一回真似てみる。

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鍵岡さん:
「自分らしい写真を撮るためには、自分の良さを突き詰めるというのも必要だと思います。ですが僕は人を見て学んだことや影響を受けたことは、とにかく1回真似てみるんです。

いいと思ったことをまずやってみて、染み込んだものが自分のものになる。なじまないものは違うなってわかりますし、色んなことを吸収したほうが、いいものの判断がしやすくなると感じています」

そう話す鍵岡さんは、まるで子供のような顔をしていました。その素直さに私はとても驚きました。いいなと思うことはあるけれど、それを見つけて実際に行動に移すのはなかなか勇気のいることです。

お子さんと同じ目線で接する鍵岡さんを見ながら、子供たちからも何かを学んでいるのかなと感じました。

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鍵岡さんが見て学び、今でも実践している仕事の進め方は「現場の緊張感をコントロールする方法」だそうです。

鍵岡さん:
「撮影中、僕はよくしゃべるんです。元々おしゃべりというのもあるんですけど(笑)

写真を撮られることは、なかなか慣れませんし、誰でも緊張しますよね。僕だって緊張しています。

でも、できるだけ普通の顔が出るのはどういう時だろうと考えた時に、そのままの日常を撮りたいから、相手にはたくさん話しかけてコミュニケーションをとりたい。僕がいることを違和感にしたくないんです。

くせや笑い方、身につけているものの好みなど、人を知ってありのままを撮ることが、ポートレートなのかなと思うところがあります。なので取材の時は、話すことで僕なりに現場をコントロールしています。

写真の仕事で取材に行くようになってから、『人って面白いな知りたいな』と感じるようになってきました。興味がないことを撮るのも辛いじゃないですか。話すともっと興味がわくし、人と話すことって楽しいんです」

コミュニケーションを生みながら鍵岡さんが撮影した写真は、古くからの友人が撮ったような、被写体の自然な表情を捉えています。

それでも鍵岡さんは、写真はまだまだ勉強中だと話していました。

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Episode 3. コミュニケーションの中で、面白さを見つける。

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「現場の雰囲気をコントロールすることも大事だけど、その場で生まれる面白さも大切にしたいんです」と鍵岡さんは続けます。

鍵岡さん:
「誰かと仕事をする上で『こうなったらいいな』という基本的な軸は双方あると思うんです。相手が求めるベクトルと僕らしさのベクトル、その二つのバランスをとりながら形にしていくんです。

でもさらに、第三のベクトルというのがあるんですよ。相手と自分のベクトルを飛び越えて、その場の取材者だったり編集者さんだったりと、コミュニケーションから生まれた、さらに面白いことを見つけてかたちにできた時に、やりがいを感じます。

現場をコントロールすることも大切ですが、ある種の寛容さも大切なんだなと感じるようになってきました」

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きっかけになったのは、秋田県を独自の切り口で紹介している『のんびり』(秋田県)というフリーペーパー。この雑誌は取材前に大きなテーマは決まっているものの、具体的な内容は取材をしながら糸口を見つけ、形にしているそうです。

取材も同時に、3人のフォトグラファーが撮影しているという変わったもの。そこで一緒になったフォトグラファーの浅田政志さんからも、大いに影響を受けたと語っていました。

寛容さから生まれるのはきっと「遊び心」ではないのかなと、ふと頭の中に浮かび上がってきました。それには密なコミュニケーションや信頼関係も必要です。

「100点取れるんだったら十分じゃないのかな?」そう思っていた私ですが「遊び心」は仕事を120点にも200点にもしてくれる大切な要素なのかもしれない。そう気づきました。

私の過去を振り返っても「これは満足いった。ホームランだ!」そう思える仕事は、どこか遊びが作れたもの。性格もあるのかもしれませんが、それが「自分らしさ」の一つだったのかもしれません。

3話目では「遊び心」のエピソードについて、もう少し詳しく伺うことにしました。

(つづく)

 


 

もくじ

 

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フォトグラファー 鍵岡龍門

2006年よりフリーフォトグラファー活動を開始し、2007年 Canon写真新世紀「春風接人」で佳作を受賞。印象に寄り添うような写真を得意とし、雑誌や広告をはじめ、当店の特集など多数の媒体で活躍している。プライベートでは3児の父として、楽しみながら子育てに奮闘中。

 


▽鍵岡龍門さんが撮影した書籍は、こちらからご覧いただけます

 


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