【わたしの引っ越し物語】第1話:心がさわぐ上京。スタッフ田中「ルーツになる味の頼もしさ」

編集スタッフ 長谷川

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引っ越しは、人生の掃除なのかもしれない。

家に溜まった日常をリセットして、物を取り換え、習慣を作り直し、吸い込む空気を変える。水回りをピカピカにすると気持ちがすっきりするみたいな作用があって、「昨日までのわたし」を「今日からのわたし」に更新できるような嬉しさもあります。

4月になりました。そわそわとするこの季節に、新生活を始める方も多いでしょう。

そこで今回は3人のスタッフに、引っ越しを経たからわかる「モノ選びの変化」や「過去の自分へのアドバイス」など、それぞれの「引っ越し物語」を振り返ってもらいました。今日から3話の連載です。

 

転職で上京した、スタッフ田中の物語。

クラシコムのスタッフは転職者がほとんど。入社を機に引っ越す人もいますし、働くうちに暮らしを見つめなおしたり、子どもを授かったりして、家を移る人もいます。

今回登場するスタッフ田中は地元の愛知県で働いていましたが、クラシコムへ転職、上京することに。初めての東京住まいに戸惑いもあったと言います。

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住んでみて気づいた、イメージしておけばよかったこと。

先輩スタッフに相談したり、インターネットで調べたりして情報を集め、愛知から東京に二度訪れて住む物件を決めたそう。光の入り具合や風通しの良さから直感で決めましたが、住んでみて初めて気づくこともありました。

スタッフ田中:
「角部屋で風通しの良い部屋だと思ったら、想像よりずっと風がうなる音が聞こえやすかった……」

弱り顔のスタッフ田中ですが、確認できる細かな箇所を押さえておくのは、意外と頭から抜けがちでもあります。

160406_movingstory_6▲クラシコムに入社してから得た知識や発見を、部屋づくりにも活かしています。

スタッフ田中:
「あと、私の部屋は照明が取り替えられないタイプだったのに、入居の時は他の条件が良かったのもあって、『それでもいいかな』と決めたんです。

でも、照明は部屋の雰囲気をかなり左右するとわかってから、悔しくなったことも……部屋は自分で手をかけて変えられる空間だからこそ、住まい方と合わせて、何を変えたくて、何は変わらなくていいか、事前にイメージしておくのが大事なのかも」

 

“自分のルーツになる味”の頼もしさ。

物価の違いや環境の変化に「体から悲鳴が上がったこともあった」というスタッフ田中。そんな日々を救ってくれたのは、実家に住んでいる頃によく口にしていたものだったと言います。

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スタッフ田中:
「実家にいつもあった食べ物ってありますよね。東京で買えるのもわかっているけど、なぜか進んで買わないようなもの。

レトルトの小豆粥や、昔からあるビスケット、田中家愛飲のほうじ茶……あとは、おばあちゃんの自家製梅干しや唐辛子。ふだんもそうだけど、体調を崩した時に口にすると本当にホッとするんです」

160406_movingstory_7▲つい最近、実家から届いた「ふるさと便」。この小豆がゆはどうしても見つからないらしい。

スタッフ田中:
「自分の暮らしを新しくつくっていけばいくほど、自分のルーツになっている味に戻っていくときがある。それを知れたのも面白かったですね」

160406_movingstory_5 ▲おばあちゃんの梅干しは飯高幸作さん作の蓋付きポットに入れて。

 

引っ越しは、気づかせてくれる。

「引っ越しするまで思い描いていたことと、実際に起きたことのギャップはあった?」と聞いてみると、スタッフ田中は「他力本願な自分がいたなぁ」と苦笑い。

スタッフ田中:
「場所が変わると人生が好転してくれそうな期待がありました。もちろん好転もあったけれど、仕事もプライベートも、何も変わらない自分がいたんです。本当に場所が変わっただけでした(笑)。

そんな自分にびっくりしながら日々を過ごすうち、“でも、変えられるものもある”とわかったのは、引っ越して環境が変わったからですね。

たとえば、インテリアへの考え方。私はずっと“お店で良い家具を見つけてそろえること”が良いインテリアにつながると思っていたのを、クラシコムのスタッフやお話を伺ったりする人の暮らしなどから、そういうわけではないんだと知りました。

古道具やDIYも含めて、手をかけるほど自分らしい空間を作ることができる。

そんなふうに得ていった知識やみなさんの実例から、私の中にあった“変えられないという思い込み”を、ひとつずつ変えていった感じです」

 


 

自分の暮らしをつくっていくほどに、自分のルーツになる味に戻っていく。

新しい生活にもやもやを感じ始めたら、このスタッフ田中の気づきが助けになってくれるかもしれません。実家が遠すぎる、忙しくて帰れない……そんな時にも、まずは思い出の味をひとさじ。

そのちいさな安心感は、どこかにふわふわと飛んでいってしまいそうな自分の不安を、しっかりと根っこへ戻してくれるきっかけになることでしょう。

(つづく)


 


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