いつまでも終わりが来ない?
変化し続ける小さな家
ルームツアー動画番組「あそびに行きたい家」。
今回お邪魔したのは一級建築士の加藤直樹さん宅。59㎡の住まいに妻と3人の息子の5人で暮らしています。
妻の実家の敷地内に建てた小さな家。最初は仮住まいのつもりで建てた家でしたが、昨年増築をして空間を拡げました。
加藤さんが「未完の自邸」と称する平屋は、家族のニーズや環境の変化に合わせて、収納や家具の位置、時には間取り自体までも手を加え続けています。
そんな加藤さんのおおらかな家づくりの様子をぜひYouTubeでお楽しみください。
子どもがのびのび過ごすために、もう一つ部屋を

元々、妻の敷地内に家を建てることはほぼ決まっていました。
しかし子どもはまだ小さく、これからの家族の人生設計も不確定なことだらけだったこともあり、家に必要な広さや設備も予想がつきませんでした。
加藤さん:
「仮住まいのつもりで必要最低限の予算と広さで小さく家を建てました。
変化や必要に応じていつでも手を加えられるように、あえて余白を多く残した設計をしています。
長男が中学校に上がるタイミングで、どうしようかと妻と考えている時に『増築もありなんじゃない?』という話になったんです」
▲昨年までは家族5人、32㎡の平屋で暮らしていました
そうして隣のスペースにプラス27㎡、子どものためのスペースをメインに増築しました。
長男と次男の勉強机とベッドに加え、3人がわんぱくに遊び回れる十分なスペースが生まれました。
▲部屋の奥には中学生の長男の半個室の部屋を作りました
加藤さん:
「子どもたちも自分のテリトリーが増えたような感覚で、のびのびと過ごしています。
これまで一つの部屋に5人がまとまっていたのも良かったのですが、分散するようになり、良い意味で適切な家族の距離感が生まれたと思います」
小さな家の収納のポイントは “奥行き60センチ”

LDKの壁面にずらりと並んだ収納アイテムたち。衣類や日用品など暮らしに必要なものはほとんどこの部屋に収納していますが、不思議と圧迫感を感じません。
加藤さん:
「収納棚は見せる収納にしました。ここに扉をつけてしまうと閉塞感が生まれてしまうので、オープンにすることで開放的になります」
▲「一つの部屋で収納が完結するので、取りに行く手間が省けて楽です」と妻の沙織さん
限られたスペースで快適に収納するために、棚板のサイズにもひと工夫が。
加藤さん:
「棚板の奥行きは30センチから45センチのものが多いのですが、我が家は60センチで統一しました。そうすることで、よく使うものは手前に、あまり使わないものは奥にと、二重で収納ボックスをしまえるんです。
さらにこの60センチという奥行きは、服が収まるクローゼットにも、勉強机にも、キッチンにもなる万能なサイズ。手に届く範囲ですべてが完結します」

住宅は “デニム感覚” で住む。許せる暮らしができる家

男の子3人と思いっきり暮らしているとどうしても家のあちこちに傷や落書きができてしまいます。
しかし、あえて節や木目の多いラフな合板を床や壁に使うことで、傷や落書きが目立たず、空間に馴染むように設計されています。
建築家として加藤さんが大切にしているテーマは「許せる暮らし」ができること。
加藤さん:
「暮らしていく中で、家族の環境や価値観が変化することや、家に傷や汚れが生じることは避けられないものです。
そんな変化を寛容に受け止められることが住宅の本質なんだと思います」

棚を作業机に変えたり、DIYでロフトベッドを付け足してみたり、ビスを外して打ち直したり……
予想外のニーズやハプニングが起きても、おおらかに受け止めて、家のあり方を変え続けています。
加藤さん:
「この家はまるでデニムのような感覚です。
デニムが汚れてなんぼ!という気楽な素材であるように、住宅も暮らしていく中で傷がつくけど、自分たちに馴染んでいく。そしてそれが自分たちだけの味になっていくのだと思います」
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加藤直樹
建築士。「N.A.O」ナオ 一級建築士事務所主宰。「許せる暮らし」をモットーに、生活感や経年変化、家族の変化などを豊かさに変えるアプローチの家づくりを得意とする。神奈川県秦野市在住。
