【35歳の仕事論】第5話:30代はまだまだ自分を変えられる!?世代に合わせた働き方(良品計画 矢野直子さん×編集マネージャー津田)

ライター 小野民

「あの人」の仕事が、いきいきと輝いて見えるのは、どうしてなんだろう。かつて自分と同じ歳だった頃、「あの人」は何を考え、どんなふうに働いていたんだろう。

転職のラストチャンスなんて言葉もささやかれる、35歳という節目。その年齢を目前にした、1984年生まれのスタッフ津田が、人生の先輩に会いに行くシリーズ「35歳の仕事論」をお届けしています。

今回は、良品計画の矢野直子さんに全5話でお話をうかがっています。

前話では、三越伊勢丹研究所から、良品計画の企画デザイン室へ戻ったいきさつを。本日は室長として部下をマネジメントすることや、今後の目標などを聞きました。

 

マネージャーの仕事って、何でしょう?

津田: 規模は違うんですが、私も編集チームでマネージャーをやっていて、人をまとめるって難しいなぁと日々感じています。

矢野さんは、マネージメントの役目をどのように考えていますか?

矢野さん: 企画デザイン室のメンバーは、野生の草食動物って感じです。24人のデザイナーがいる部署なんですが、みんな行きたいところに自由に草を食べに行っちゃうので、まあ私は、番犬みたいな存在でしょうか。

ある程度、「この柵から出ないでね」って連れ戻すこともあるんだけれど、それぞれが責任をもって企画を担当しているので、信頼してます。

津田: 番犬、という感じ、分かります。信頼して任せるところ、しっかり見守るところ。そのバランスなんでしょうか。

あとちょっとした悩みなんですが。マネジメントしていると、自分が担当できる案件が減りませんか。私には、まだまだ自分で手を動かしたい気持ちもあったりして……

矢野さん: 歯がゆいこともありますよ。もう「Found MUJI」で紹介するものを探す旅にも、何年も行ってません。でも20代から40代前半に仕事でやってきたことが、本当にいまの私の糧になっていると実感しているので、できるだけ若いスタッフに同じ経験をしてもらいたいんです。

▲Found MUJI Indiaの旅で出会った一場面。

津田: 「糧」って具体的にどういうことですか?

矢野さん: ひとつは現場に行くことでしょうか。無印良品のコンセプトそのものが、現場に行って、素材・適材を見つけてものづくりを見直すこと。だから現場に行かないと、やっぱり仕事はできないんです。

たとえば、歯ブラシスタンドは、ひとつの工場ではなく、ある地域一帯のいくつもの工場が力を合わせて製造しています。工場にずらーっと歯ブラシスタンドが並んでいるのを見ると、感謝の気持ちが湧いてきますよ。

無印良品では、特に器は日本の産地にこだわっていて。ひとつひとつの工場はもちろん、各地の産地を盛り立てていくのが、大切な役目だと思っています。

 

30代でも変わるチャンスはたくさんある!?

津田: 最後に、矢野さんの、今後の目標などがあれば知りたいです。

矢野さん: 目下の目標は、笑顔と体力の維持です!

若いデザイナーに「どうやって働いていけばいいですか?」とよく聞かれます。20代はとにかく、ひたすらにがむしゃらにやったらいいよって言ってますね。

30代の人には、昔、上司から「30代はまだ性格が変えられる」と言われた話をよくします。まだ30代は変わるチャンスですよ。

30代のときの先輩からのアドバイスで、座右の銘になっている言葉もあります。たぶん私は、ふてくされた顔をしていたんでしょうね。「クリエイターはにこにこしてなきゃだめだよ」と言われたんです。

そのときまで「にこにこ」って、若い子のものだと勝手に思い込んでいたんですが、その時からいくつになってもにこにこしていようと心がけるようになりました。

当社の専門家に意見をもらうための委員会「アドバイザリーボード」のメンバーである、御年81歳のコピーライター、小池一子さんに、「2017年の抱負はなんですか?」と聞いたら、「友情と健康よ」って言われたんです。

自分の大事な人から受ける仕事のオファーにきちんと応えていくには、健康であり続けなければいけない、と。それを聞いてから、「友情と健康」をもうひとつの座右の銘にしてます。

 


矢野さんにお会いして。


 

スタッフ津田「楽しい仕事の真ん中には、きっと “チャーミング” なひとがいる」

このインタビューまでに、いくつか矢野さんが取材を受けた記事を拝見した。ロングヘアを頭のうえでお団子にしていた姿が印象的だったが、この日お会いすると、髪をばっさりとショートにされていた。

そして写真撮影もすべて終わった、取材の最後。

雑談で、同行していたライターの小野さんが「髪を短くしたのは、なにか心境の変化ですか?」と尋ねると、「ふふふ。失恋したの」と矢野さん。

「ええーー!」と驚く、取材チーム一同。

「こう答えると盛り上がるのよねー」と矢野さん。見ればちょっぴり、いたずらっ子の表情をしているではないか。

「なんだー、もう。ドキドキしちゃいましたよー」と、口々に盛り上がる私たち。きっと矢野さんの想定していたとおりの反応だろう。

一本とられたなー、なんてみんなで笑いながらも、これこそが矢野さんの魅力なのかもしれないと思った。

場がやわらぐ。みんなが笑顔になる。楽しい気分になる。一緒にいたくなる。

もっともっとお話したいな、と思わせる何かが、矢野さんには確かにあった。

関わっているひとたちが「楽しいな、がんばりたいな」と思う仕事の中心には、きっとこういう「チャーミングなひと」が、もれなくいるのではないだろうか。

願わくば、自分もそんな大人になりたいものである。

「30代はまだ変われる」。矢野さんのこの言葉を信じて。

スタッフ津田

(おわり)

 

【写真】鍵岡龍門(3枚目以外)


もくじ

 

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矢野直子(やの なおこ)

東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、1993年、株式会社良品計画入社。2003年、夫の赴任でスウェーデンへ。マルメで3年過ごす。その間、業務委託でヨーロッパ〈MUJI〉に従事。ミラノ・サローネの展示やヨーロッパMUJIの商品開発に携わる。2008年、株式会社三越伊勢丹研究所(旧伊勢丹研究所)入社。リビングのディレクションを担当。2013年、良品計画へ再び入社。現在生活雑貨部企画デザイン室長を務める。

 

onotami_profile

ライター 小野民(おの たみ)

編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に離島・地方・食・農業などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫3匹と山梨県在住。


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