【ボーダーの似合うひと】後編:年齢で区切らない。たいせつなのは「マイペース」(徳田民子さん)
ライター 小野民
カラフルなボーダーをさらりと着こなす、73歳の徳田民子(とくだ たみこ)さん。チャーミングな生き方の秘けつを知るため、長野県安曇野を訪ねています。
現在の暮らしぶりをお届けした前編に続き、後編では60代で縁もゆかりもない安曇野に越した決断や、いま、大切にしていることを伺います。
どんなに楽しい時期にだって、「終わり」はあるから
徳田さんは、1960年代から約40年間、東京の出版社でファッション誌の編集者として活躍してきました。仕事一筋の人生を送ってきたからこそ、定年を迎えるとき、「これからどう生きるか」が大きな問いとして浮かんだそう。
徳田さん:
「ファッション誌の編集は、天職だと思ってやってきました。毎日駆けずり回って、辛いこともあったけど、とにかく楽しくて。でも、歳をとれば、いつかは終わりがくるもの。一生この仕事を続けていけるわけではないなら、気分を変えて違った生活を楽しもう、と思ったんです。
夫と2人、車で長野を旅していたとき、壮大な北アルプスの山並みを見て『第二の人生はここで』って夫婦で意見が一致したんですよ」
60代で、見ず知らずの土地に移住する。相当な覚悟がいりそうですが、徳田さんに気負いはなかったといいます。
徳田さん:
「人生に『根付く』という感覚はあまり持っていないんです。ここにいても、いつかまたどこかに行きたい気分が常にあって、きっとなんとかなるもの。わりと気軽に考えちゃうタチなのよ」
たくさんのものを見てきたけど、行き着いたのは「ベーシック」
▲サイザルかごには、色とりどりのボーダーのTシャツが。
とはいえ、慣れ親しんだ場所から移り住むのは大きな変化。大胆な決断をするからこそ、悩みに悩んだ結果、自分にとって本当に大事なことが明確に見えてきたそう。
そうして行き着いたのが、「シンプルに暮らしたい」という想いでした。
徳田さん:
「今までたくさんのものを手にしてきたけれど、いろんなものを削ぎ落としたら、結局ベーシックなものを残したくなったの。服も日用品も、ベーシックなものを自分流に使いこなすほうがおもしろいんじゃないかって切り替えられたのね」
いま、徳田さんの定番はカジュアルなボーダー柄。着ると元気になれるというボーダーは、お守りのような服なのかもしれません。
本当はずっと30代のままでいたいけれど
徳田さん:
「30代の頃、仕事が軌道に乗っていてすごく楽しかった。その頃と気持ちはなーんにも変わってないのよ。もちろん歳はとっていくわけだけど、気にしないというか、気にしても仕方がないこと。だから今だって、変わらずなんでも楽しみたいと思うの。
『体の衰えを感じるから、健康のために歩かなくちゃ』とは、考えたくない。ご近所の新しいお店を開拓したいから、ふらふら楽しく外を歩くの。
最近、赤を着る機会が増えてきたのも、華やかな色が顔に似合ってきたから。赤のセーターは年をとってからの方が、わたしの肌に似合うのよ。元気ももらえるしね。
あとは、お仕事でもなんでも、縁のあるお声がけは、なるべく断らない。気楽に考えるタチだからなのかもしれないけれど、あなたたちみたいな若い人と知り合えるなんて、なんだか嬉しいじゃない」
「夢は、ダンス上手なおばあちゃんになることよ」
常に変わり続ける徳田さんは、「いま、夫と2人で踊りを習おうと思って教室まで調べてあるのよ、うふふ」といたずらっぽく笑います。
徳田さん:
「最近、ディスコに行っていた若い頃を思い出すの。上手にリズムに乗って踊りたい気持ちが再燃してきて。若い人たちに混じって踊るの、楽しそうでしょう?
今は夫の選んだ音楽にのせて、踊りながら家事をするのが楽しみなのよ」
東京から安曇野への引越しも「ひとところにとどまっていられないから」と語っていた徳田さん。そんな軽やかな心持ちが、年齢や暮らしのリズムが変わる中でも、変わらずに「自分らしさ」を保つ秘けつなのかもしれないと思いました。
徳田さん:
「70代って、途方もなく先なように感じるだろうけれど、振り返ればあっという間よ。
30代はこう、40代ならこうすべきって、若い頃は年齢で区切って考えたがるけれど、いまになって思うのは、全部『わたし』だっただけ。ずっと地続きなんです。
だから、無理に『年相応のふるまい』なんてしなくてもいい。いまの自分にとって大事なことや、いまの居場所を大切にしていれば、きっと自分らしく歳を重ねていけるはずよ」
(おわり)
【写真】原田教正
もくじ
徳田民子
1945年生まれ。文化服装学院デザイン科を卒業後、文化出版局『装苑』などの雑誌編集長を務める。退職後は2008年よりフリーランスのファッションコーディネーターに。2009年長野・安曇野に生活の拠点を移す。7月14日に『大人のおしゃれ手帖特別編集 徳田民子さんのファッションルール』(宝島社)が発売予定。元広告ディレクターの夫・裕二さんと2人暮らし。
ライター 小野民
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫3匹と山梨県在住。
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