【家が好き】第1話:仕事に没頭した30代。当たり前の暮らしが変わって(スタイリスト・城素穂さん)
編集スタッフ 奥村
おうち時間。今年ほどこの言葉を目にした日々はありません。
あたらしい生活様式がうたわれる中で、わたしも自然と家で過ごす時間について考える機会が増えました。
そんな今あの人はどんな暮らしを送られているのだろう? お話を聞きに訪ねたのは、スタイリストの城素穂(じょう もとほ)さんです。
今年、赤ちゃんが産まれて。スタイリスト城さんの今
城さんは、食卓周りのスタイリングを手掛けるフードスタイリスト。
フリーランスで活動後、ベルギーのレストランで1年間働き、帰国後も雑誌や書籍を中心に多くのメディアでスタイリングの仕事を手がけてきました。
現在は写真家の夫と、今年誕生した娘さん、愛犬のもずくと都内で暮らしています。
わたしが以前、取材で城さんにお会いする機会があったのは5年前。当時ひとり暮らしだった城さんのお宅は、スタイリストという仕事柄たくさんの器や雑貨に溢れていながらも、それらがきちんとあるべきところにおさめられていて。
すっきりと整っているけれど、決して緊張感が漂っていない、不思議に居心地のいい空間だったのを覚えています。
「この家に暮らしたい」。結婚のきっかけになった住まい
▲広い一間の手前がリビング、奥には夫婦のベッドと、娘さんのベビーベッドが並ぶ
現在の住まいに暮らし始めたのは4年前。引越しを検討していた頃に、物件サイトで偶然に出合った賃貸の集合住宅で、ひとめぼれだったそう。
メゾネットのようなつくりになっていて、1階に夫の仕事部屋が、リビング兼寝室が中2階に、小さな階段を上がった2階にキッチン&ダイニングがあります。
城さん:
「ネットで偶然に見つけ、ピンときて、急いで申し込んだのを覚えています。
窓が広くて、きれいな光が差し込むところ。敷地の周りにたくさんのグリーンが植えられていて、それぞれの窓から木々が見えるところ。天井が高く、開放的な雰囲気も気に入りました」
物件との出会いをきっかけに、この家で共に暮らしたいと、当時お付き合いしていた方と結婚。
▲玄関横、靴棚の下にある小さな余白スペースが、城さんのお気に入り。季節の植物や花器をしつらえている
DIYができる物件だったので、もとはカーペット材だった床をフローリングに張り替えたり、玄関の入り口に古い家屋の端材を使用した靴棚を取り付けたり、少しずつ手を加えながら住まいを整えてきました。
仕事に没頭した30代。体調を崩して、変わった暮らし
実は、ここ数年は家で過ごす時間が長くなっていたという城さん。4年前に体調を崩し、しばらく仕事をお休みしていた時期がありました。
城さん:
「仕事柄、リースや買い物で外を出歩くことも多かったのですが、病気になってからはそれができず家にこもりきりになりました。
気力や体力がなくなってしまいましたし、正直なところお金もなくなってしまって。物を消費することよりも、できるだけ使わない、コンパクトな暮らしへ気持ちがシフトしていきました」
家での時間が増えた分、洗濯や掃除、料理など、家事に時間を費やすように。それは、ひとり暮らしの頃にはあまり向き合えていなかった新鮮な体験だったといいます。
▲愛犬のもずく。「スキッパーキ」という日本では珍しい犬種
その頃、気分転換になればと新しく家族に加わったのが愛犬のもずく。そしてもずくが来てから3年後、今年頭には娘の杏朱ちゃんが誕生しました。
城さん:
「今までペットと暮らした経験がなかったので、もずくとの暮らしは新鮮でした。自分が面倒をみなければいけない生き物がいて、その子にとって何が心地よいのかを探ること。もずくとの暮らしで得てきた経験は、今の子育てにも役立っている部分があると思います」
ひとりから2人へ、そして子供が生まれて3人と1匹に。家族のかたちが変化したことと、自身の病気を経て、城さんの暮らしに対する心境は少しずつ変化していったといいます。
最低限のものだけ。それでも、暮らしは回っていくと気づいた
城さん:
「病気をきっかけに、今まで当たり前だと思っていた暮らしがリセットされたように感じました。実はそれと似た経験を、以前にもしたことがあったんです。
30代のはじめに、ベルギーのアントワープにあるレストランで1年間修行をしていた頃のことです。
当時暮らしていたのは、本当に小さなワンルームのアパート。暮らしに必要な最低限の物しかない環境で、こんな中でも、人は案外暮らしていけるんだいうことを身をもって知りました」
今目の前にある暮らしは、決して当たり前のものではない。けれど、頼りにしていたそれがなくなってしまったとしても、人は生きていける。病気と海外での生活、ふたつの経験を経て今はそんな風に思っている、と話す城さんの表情は、どこか晴れやかに見えました。
「制約があることで、安心できる」
▲仕事道具でもある器たちは、リビングの大きな食器棚に大切に保管されている
城さん:
「今は、誰にとっても不自由さを感じることのある時期だと思います。けれどわたしは、制約があった方が少し安心できる気もするんです。
昔から旅が好きで、中でも道中の列車や飛行機で過ごす時間が好きなのですが、外に出られず、動き回ることもできない限られた空間では、読書をするか映画を見るか。できることが限られていますよね。
でも、選択肢が少ないからこそ、悩む必要がなくそれに没頭できる。他のたくさんのことに気持ちを惑わされないから、心穏やかにいられる部分があるのかもしれません」
家にいる時間が増え、ここ最近は金継ぎを習い始めたという城さん。今まで直す時間がなくそのままにしていた欠けた器に、少しずつ手を加え始めています。
欠けたお皿を継いだり、衣服のほつれを繕ったり。そんな作業をするひと時が好きだと気づいたのも、新しい変化だそう。
制約の中だから見つけた、今できること。そして、それを楽しむこと。そんな城さんのスタンスは、子供が産まれてからの暮らしや、現在のインテリアにもあらわれているように感じました。
第2話では、娘さんが生まれて変化したという今のインテリアを拝見しながら、引き続きお話を聞いていきます。
【写真】白石和弘
もくじ
城 素穂(じょう もとほ)
スタイリスト・chizuさんのアシスタントを経て独立。食まわりのスタイリストとして活動後、ベルギー・アントワープのレストランへ遊学。帰国後再びスタイリストとして活動。病気を機にしばらく休業し、夫と10ヶ月になる娘、愛犬と共に暮らす。
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