【人生のまんなか】第1話:暮らしも仕事も走り続けた30代。40歳で立ち止まるまで

編集スタッフ 寿山

40代は、どんな景色が見えるのだろう?

そんな好奇心を膨らませていたとき、1冊の本に出合いました。タイトルは『自分に還る』、50代の方の暮らしと仕事の話をまとめたインタビュー本。

魅力的な6人の女性たちが、人生のまんなかを折り返して、どんな葛藤を抱えていて、どんな風に今の自分と向き合っているか。とても丁寧に描かれた一冊でした。

ページをめくるごとに著者のメッセージをひしひしと感じて、この本を作った人はどんな景色を見ているのだろう。ご本人の言葉を通して聞いてみたいと、著者である石川理恵(いしかわ りえ)さんにお話を伺いました。全3話でお届けします。

 

人生このままでいい? 違和感と向き合って

石川さんがライターを志したのは、27歳のとき。

当時、昼間は夫の実家である花屋を手伝いながら、夜は収入を得るためにアルバイトを掛け持ちする生活でした。忙しい日々が一段落したときに、ふと「このままでいいのだろうか?」との違和感が湧き上がります。

石川さん:
「私には、10代のころから憧れていた仕事があったのに、挑戦もせずにこのまま家業を手伝っていて本当にいいのかなと感じて。納得いかないまま暮らしたくないし、それを家族のせいにしたくないとも思ったんです」

まっすぐな言葉に、ハッとしました。自分の人生がうまくいかないとき、誰だって人のせいにはしたくないけれど、逃げないことは苦しくもあります。

 

子育てが大事。それでも自分らしく働きたい

そうして石川さんが目指したのは、昔から大好きだった雑誌づくりの世界に関わること。未経験からフリーライターのアシスタントとなり、昼夜を問わず働きづめて3年間。ようやく仕事にも慣れてきたところで、家族の中心的な存在だった義母が大病を患い余命を宣告されました。

みるみる生きる気力を失う義母と向き合うなか、長男を授かったものの、産まれる前に義母は他界。悲しみに浸る間もなく子育てが始まりました。

石川さん:
「これからどう働けばいいのだろう?と、先が見えないながらも考えました。

子育てをしながらでも、不規則でハードな雑誌の仕事を続ける道はないかなと考えて、思いきってフリーランスになろうかなと。フリーなら、夫の花屋の手伝いも続けられると思ったんです」

 

時間も、経験も人脈もないけれど。好きなことに近づくために

フリーになると決めたものの、アシスタントだった石川さんには人脈も経験もなく、乳児を抱えながら模索するなかで、あることを思いつきます。

石川さん:
「アシスタント時代は男性誌ばかり作っていたのですが、フリーで仕事をするなら好きなインテリア誌に携わりたいと思いました。仕事がもらえる保証もないし、子育てしながら出来る仕事量は限られていますし、後がないからこそ、どうせなら好きなジャンルに絞ろうとわりきれたんです。

最初はとにかく取材できそうな家の情報をたくさん集めて、出版社に売り込みに行っていました」

 

働いても働いても、焦りが消えない30代

なんとか仕事をもらえるようになった石川さんは、30代をまさに激動の10年だったと振り返ります。

石川さん:
「自分がライターとしての仕事を確立する前に子育てが始まり、いくら働いても焦りは消えなくて。とにかく働いて、子育てにも奮闘して、そんな大変さが記憶に残っています。でも、30代で体力もまだあったから何とかなっていたんですよね」

それから間もなく次男、さらに三男を授かった石川さんは、つらい出来事に直面しました。

 

自分の力では、どうにもならないこと

三男が産まれてすぐ障害があることがわかり、1歳のときに亡くなりました。

自分の力ではどうにもならないことがある。そんな現実を突きつけられた石川さんは、初めて「神にすがりたい」という気持ちがわかったと言います。それでも何にもすがらずに生きてこれたのは、周りの人が折々に助けてくれたから。

毎日病院に通う石川さんに、マッサージをしてくれた看護師さん。退院のたびにもらった手紙。命日には必ず手を合わせにきてくれる保育園の先生。三男の誕生日には、ケーキと歳の数のロウソクを用意してくれる義姉や、おめでとうのメールをくれる友だち。なんの見返りも求めない優しさに支えられて、1人では抱えきれない思いと、少しずつでも向き合ってきました。

 

40歳を前にして、おとずれた転機

暮らしも仕事も課題が絶えない30代で、石川さんに転機が訪れます。

石川さん:
「38歳くらいのときに、タジン鍋の本を企画・編集したらヒットして。それから順調に仕事をもらえるようになったんです。とにかく嬉しくて、いただける仕事はほぼ引き受けていました。

断ることは、悪いことだという気持ちもあって。

40歳になる頃にはもうパンクしてしまって、担当していた書籍が出版できるかできないかの瀬戸際に追い込まれてしまいました」

ちょうど同時期に、東日本大震災を経験。多くの人が感じたように、石川さんも「自分に何が出来るだろう?」と考えたそう。ライターの仕事をつづけていく上での課題にも直面して、立ち止まざるを得なかったといいます。

(つづく)

 

【写真】佐々木里菜

 

もくじ

 

石川理恵

1970年東京都生まれ。ライター・編集者。雑誌や書籍でインテリア、子育て、家庭菜園などライフスタイルにまつわる記事、インタビューを手掛ける。近著は『自分に還る』。人の気持ちが最大の関心ごと。生まれつき障害のあった三男が他界したことをきっかけに、通信制の大学で心理学を学んだ。現在、心の本屋をオープンすべく準備中。http://hiyocomame.jp

 

 


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