【変わることって案外たのしい】 前編:ビューティライターAYANAさんが考え続ける、「美しい」って何だろう?
ライター 嶌陽子
「私の独り言のようなものを集めた本なんです」
そう話すビューティライターのAYANAさん。11月18日に初のエッセイ集『「美しい」のものさし』(双葉社)を上梓しました。
AYANAさんといえば、当店の連載「45歳のじゆう帖」でもおなじみ。日常の中で感じたことを率直に綴ったエッセイにはユーモアや温かさ、ときにはっとさせられる視点があって、私も毎回楽しみにしているファンのひとりです。
また、昨年発売された当店のメイクアップシリーズにも開発アドバイザーとして参加。メイクすることの喜びや楽しさをあらためて知ったというお客様の声がたくさん届きました。
そんなAYANAさんが考える「美しい」ってどんなことだろう? 年齢と共に生まれる変化とどう向き合えばいい? 著書の出版を機にあらためてじっくり聞きたくなり、AYANAさんに会いに行きました。
“美容ライター” ではなく “ビューティライター” と名乗る理由って?
以前は「ライター」「プランナー」など、複数の肩書きで仕事をしていたAYANAさん。友人らのアドバイスも受けつつ、3年前に“ビューティライター” に統一しました。
AYANAさん:
「時々 “美容ライター” と紹介されることがあると、なんだか恐れ多いと思ってしまうんです。
もちろん美容に関する仕事をしていますし、メイクや化粧品も大好きです。でも美容が主に外見、とりわけ顔に関することであり、何らかの目標に向かって励むことなのに対して、 “美” ってもっと多様なものだと思っていて。
たたずまいや意志、選択できることの強さ、人それぞれの複雑な素養……。そういったものも美しいですよね。さらに言えば、ある人にとってはグロテスクなものでも、他の人には美しく見えるかもしれない。それら全部を含めて、私は美しいものが好きだなあと思ったんです。美容はそうした “美しい” の中の一部なんですよね。
AYANAさん:
「私にとっての “美しい” って何だろう?というのは、昔からずっと考え続けてきたことでした。
それが世の中の考え方とずれていても批判したりする気は全くないんです。今回の本のタイトルを『「美しい」の定義』などではなく『「美しい」のものさし』にしたのも、人それぞれの美の基準があると思っているから。
読んでくださる方に何か一つの正解を紹介したいわけではなく、『私はこう思っているんだけれど、皆さんはどうですか?』という気持ちで書きました。
だからこの本を読んで、皆さんそれぞれが『自分の好きなものって何だっけ?』『自分にとって美しいものって何だろう』と考えてくれたら嬉しいですね」
自分の顔を大好きになれなくても、親しみを持つことはできる
現在は美容を切り口にした記事の執筆や化粧品の企画開発など、多岐にわたって活躍しているAYANAさん。でも「自分の顔は昔から好きじゃないし、いまも好きじゃないんです」と語ります。
AYANAさん:
「昔から写真を撮られるのも嫌い。カメラを向けられると『私はいいです、私が撮りますから』って言っちゃうタイプでした。
でも3年前に肩書きをビューティライターにしてから、意識が変わりました。「ビューティ」を名乗るなら、自分の外見に責任を持たなくちゃって思ったんです。だから前よりも自分の見た目に関して考えるようになりましたね。
『前からこの角度から写真を撮られるのが好きじゃなかったけれど、それはなぜなんだろう』って自分の顔を鏡でじっくり見て考えたり、自分の顔をいろいろな角度から自撮りしてみたり」
AYANAさん:
「そんなふうに普段から自分の顔を見ているうちに、自分の顔に対してよそよそしい気持ちは減ってきました。今も自分の顔はそんなに好みではないけれど、前より慣れてきたというか。あくまで自分比ですが、親しみが持てるようになってきたっていうのかな。
服装や髪型についても『これでいいか』と投げやりになるのではなく、もう少し積極的に考えるようになりました。
髪も、以前から切ってもらいたいと思っていた人に思い切ってお願いしてみたら快諾していただいて。それまではいつも同じストレートロングでいいと思っていたのが、最近は切ってもらうたびに違う髪型で、パーマもかけるようになりました」
AYANAさん:
「そうやって、外見との向き合い方が少しずつ変わってきた気がします。自分の顔を大好きになれと言われても難しいけれど、自分なりに少しずつ前に進むことはできるんですよね。
ひとつ小さな一歩を踏み出してみると、そこが新たなスタートラインになって、またその先に行けることもあるのかなと思っています」
新しいメイクをすると、見える景色が変わるかも
昨年春に発売された、当店オリジナルのメイクアップシリーズ。AYANAさんはアドバイザーとして企画の段階から関わってきました。
AYANAさん:
「一緒に開発に取り組んだスタッフの中には『メイクは苦手』という人もいて。最初の頃はその戸惑いが私にも伝わってきました。
でも、アイシャドウをつけたことがないという人に『この1色から始めてみれば?』と提案してみたり、今までオレンジしか使ったことがないという人に『この色も重ねてみたら?』とアドバイスしたり。
そうしたら『えっ、こんなふうになるの!』とか『この色は似合わないと思い込んでいたけれど、そんなことなかった!』とか。皆さんが少しずつ前向きになって、どんどん興味を持ってくれるようになったんです。ひとつ新しいものを試してみることで、きっと見える景色が変わってくるんですよね」
AYANAさん:
「メイクとか美容って、一見暮らしとはすぐに結びつかないかもしれないですね。
でもメイクをして新しい自分を発見することで、服を選ぶのが楽しくなる。好きな服を着たら、人に会いたくなるし、笑顔だって増えるかもしれない。
そんなふうに美容が暮らしに派生していくことってあるのかなとは思っています。いつもの自分の延長線上にありつつ、少しだけドレスアップする。オリジナルメイクアップシリーズを使いながら『メイクって楽しい!』って思ってもらえたら嬉しいですね」
実は私自身、自分の顔を鏡で見るのが苦手。「美容」というものにも大きな距離を感じていました。
でもせっかく自分の人生に付き合ってくれているこの顔に、もう少し親しみを持って向き合ってみたら、何か違う景色が見えるのかもしれない。AYANAさんの話を聞いて、そんなことを思いました。
続く後編では、年を重ねることによる変化との向き合い方について聞いてみます。
【写真】丸尾和穂
もくじ
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。
11月18日に初の著書『「美しい」のものさし』(双葉社)が発売。
instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
45歳のじゆう帖
バックナンバー
AYANAさんに参加してもらい開発した
KURASHI&Trips PUBLISHING
メイクアップシリーズ
AYANAさんも立ち会って制作した
スタッフのメイク体験
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