【いつかのおしゃれ】後編:72歳の今だから似合うものがある。時を重ねて生まれたものって?

編集スタッフ 岡本

葉山に住む伊藤千桃(いとうちもも)さんは、今年で72歳。朗らかな笑顔に白いシャツと体にフィットしたデニムがよく似合っています。

自分が落ち着くスタイルを軸に、その年代ごとにスタンダードを更新して、今はシャツとデニムが日常着。

そんな千桃さんに、歳を重ねること、そして今だからこそ楽しめるおしゃれについてお話を伺っています。

「洋服に負けない」というおしゃれのモットーや生い立ちについてご紹介した第1話に続き、後編では、70代を迎えて感じたおしゃれの変化についてお届けします。

前編から読む

 

お化粧の代わりに、色柄もので華やかに

黒や茶色の服を好んで着ていた時期を経て、ここ最近は、色や柄のあるファッションを積極的に取り入れるようになったのだと話します。

千桃さん:
「年齢を重ねたからかしら。気持ちを上げるためにはっきりした色や柄の入ったアイテムをよく着るようになりました。

普段はお化粧をあまりしないので、そういった小物で顔まわりを華やかにさせたいなと思って。

特にスカーフは重宝してますね。

シャツやタートルネックの中に忍ばせて、チラッと見えるくらいがちょうどいい。汗をかいても気にせず洗えるので、綿素材を選んでいます」

明るい色や柄を取り入れるようになったのは、白髪の影響もあるのだとか。

千桃さん:
「40代前半の頃に、突然前髪のあたりだけシュッと白髪になったんです。それを見たときに『なんだかいい感じ!』って自分で思ってね。

そのまま染めることなく、いつか真っ白になるのが楽しみだったけれど、なかなかならなくて今はこんな感じ。

美容院に行くとなると半日かかってしまうのが面倒で、今はカットも自分でしています。

白髪が混じると全体的に柔らかい印象になる気がして、着たことのない色や柄にも挑戦しやすくなりましたね」

 

愛用しているシャツは、30年来の相棒

千桃さん:
「庭にいろいろな植物があって、ちょっと時間があると手を動かしたくなるの。料理も好きで一日中台所に立っている日もあるから、だいたい洋服は土や油で汚れます。

だからシャツもデニムも、毎日洗う。

そうやって遠慮なく着続けてもくたびれないのが、この日常着のいいところです。

シャツは、白や黒、薄いピンクなど5着ほどを着まわして、なかには30年以上愛用しているものもありますね。

ラルフローレンやヨーガンレールは鎌倉の近くにお店があったから、自然と手に取る機会が多くて。当時は高いからどうしようかなと思ったけど、10年着れば元が取れるわと思っていたら、もう30年でしょう。

おしゃれなものを選んできた意識はないけれど、長く着ることでこのブランドのシャツのカッティングは自分の体に合うなとか、この生地ならほつれても直せばずっと着られるというのが分かってきたのね」

千桃さん:
「あとね、この格好のよさは、アクセサリーを変えたり羽織りものを着たりすると、ぐっとおしゃれに見えるところ。

急な来客でも慌てないでいられますよ。

お化粧道具はあまりないけれど、アクセサリーはお気に入りのものをいくつか持っていて、特にピアスは必需品です。

ジャカルタで生まれたとき、すぐにピアスホールを開けてそれからずっと何かしらつけているので、ないと忘れ物をしている気分になっちゃうの。

庭仕事のときは小さな真珠のピアスがお決まり。一番のお気に入りは、お尻のデザインがかわいいブタのピアスね。

アクセサリーはずっと傍にある私の楽しみなので、これから先のおしゃれにも欠かせない存在です」

▲珍しいデザインのピアスは、旅行した際に見つけたもの。

 

いつもの雰囲気を作る「羽織りとスニーカー」

シャツとデニムの定番を持ちつつ、時には普段とは違うおしゃれを楽しむ時もあるのだそう。

そんなときは、ふたつのアイテムをベースにチャレンジすることが多いと話します。

千桃さん:
「長くて軽い羽織りものが好きでいくつか持っていますね。

最近買った濃いピンクのデニムを履く時なんかもこういった羽織りを一枚着るだけで全体をまとめてくれるし、いい具合に『いつもの雰囲気』に見せてくれますから。

それから足元はスニーカーね。ヒールの靴も持っているけれど、やっぱり靴は歩きやすいものが一番。

色は白を選べばスニーカーでも上品な雰囲気になるので、重宝しています」

 

重ねた時間のおかげで、ゆとりが生まれて

突然現れた白髪をいいな、と思ってそのまま受け入れたり、お化粧をしなくなった代わりに色のある小物を取り入れたり。

今だからこそ楽しめるおしゃれを楽しんでいる千桃さんに、改めて年齢を重ねることとおしゃれについて聞いてみました。

千桃さん:
「割と若い頃から、歳を重ねていくことに対していいイメージを持っていた気がしますね。

40代になったときはその先の50代が、50代になったときはまた先の60代が『楽しみだわ』って思ったのを覚えています。おしゃれもその年代ごとに似合うものがあるはずだから、若作りはしないって決めてるの。

70代の今だから、ちょっとクセのあるものをまとっても、茶目っ気があっていいじゃないって思えるでしょう」

千桃さん:
「シワや白髪をそのままにしているのも、隠す必要はないんじゃないかって思うから。

歳を重ねるなかで恥ずかしいことや忘れたいような出来事を経て、きっとある時から、いい意味で開き直れるようになったのね。手のシワなんかもすごいけれど、そりゃあ70年も生きてきたんだから仕方ないって。

そうして今の自分を認められるようになると、おしゃれも暮らしもゆとりが生まれてラクになった気がします。

こう思えるのは、私がこれまで生きてきた時間があったから。

もうこんな歳だからなんて思わずに、これからもわがままに、好きなものを自由に着ていきたいですね」

私は考えても分りっこない、ずっと先のことを見ようとしすぎていたのかもしれません。手が届きそうな少し先の未来を想像して、今にはない楽しみが待っているかもしれないと小さなワクワクを感じて過ごす。

千桃さんとお話をして、そんなふうに歳を重ねていくことを捉えてみたいなと思いました。

やっぱり凛とした人生の先輩とのおしゃべりは、面白くて発見がいっぱい。

きっとまた街で見かけては目で追って、いつかの自分を思い描いてしまうのでしょう。でもこれからは、いまいち掴めない未来の姿にモヤモヤすることはなさそうです。

だって今と少し先の未来を見つめることが、いつかの自分の凛とした姿に繋がることを知ったから。

(おわり)

【写真】芹澤信次

 


もくじ

 

伊藤千桃

1950年(昭和25年)4月24日ジャカルタ生まれ。日本人の母とインドネシア人の父の間に生まれる。自然豊かな葉山にて「桃花源」という屋号で民宿とケータリングサービスを行っている。著書に『千桃流・暮らしの知恵(主婦の友社)』がある。

 


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