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【暮らしのみずうみ – 松本便り】第3話：強くてかわいい、スーパーマンプリンセス。

ライター　桒原さやか

我が家の子どもたちは、ただいま4歳と2歳。

2歳の息子は意思表示がつよくなってきました。ちょっとでも思い通りにいかないことがあると、モノを投げたり、大きな声でわぁー！とか、ダメー！と言ったり。話をしてもなかなか聞いてもらえず、出かけた先で、地面にばたんと倒れて動かなくなるのもしょっちゅうです。

今年から幼稚園に通いはじめた4歳の娘は、猛スピードで成長中。「これはダメだよ」と目を見て話すと、「うぅ……わかった」と納得してくれることも増えてきました。以前なら大泣きしていたのになぁ。いろんなことがわかるようになってきたようです。

最近、息子が大騒ぎしていると、娘はじっと静かに待つようになりました。わたしたちが困っているのが、娘なりにわかるよう。そんな姿を見るたびに、胸がぎゅうっとなります。
わたしも夫も末っ子同士。どうも、お姉ちゃん、お兄ちゃんの気持ちがわからないのです。だから余計に心配になるのかもしれません。

娘は大きくなってきて、遊び方も少しずつ変わってきました。

最近はねこのお母さんになるのがブーム。どこに行くにもねこのぬいぐるみ（名前はコズちゃん）を背中に背負って出かけていき、ミルクをあげたり、ごはんをあげたり。夜は寝かしつけをしたりして、かいがいしくお世話をしています。

ある日は、ダイナソーになりたいらしく、足にゴム手袋をはめてわぁーーー！と怖い顔で家中歩きまわっていたり。またある日の朝は、ダンゴムシになりたいと言いはじめて、忙しい時間帯にせっせと新聞紙でダンゴムシなりきりセットを作ったこともありました。
ところが、次の日になると、プリンセスになりたいそうで。ピンク色のドレスをきて、ティアラをあたまにのせて、大声で歌をうたっています。

娘はいったい、何になりたいんでしょうか。

強くもなりたいし、かわいくもなりたい……。
そんな娘は、自分のことを「スーパーマンプリンセス」と言うんです。
その言葉を聞いて、そうか！と何かがつながったような気がしました。

お姉ちゃんにもなりたいし、まだまだ甘えたいし。強いスーパーマンにもなりたいし。かわいい猫にもなりたいし、ダイナソーにもなりたい。

娘はかわいいのが好きなのか、かっこいいのが好きなのか、どっちなんだろう……と思っていましたが、どちらかではないのかもしれません。いろいろぜんぶ含めて、娘なんだなと思います。

よくよく考えてみたら、自分だってそうです。

友だちと過ごしているときの自分。
仕事をしているときの自分。
夫と話しているときの自分。
母の前にいる、娘の自分。
子どもたちのママである自分。

わたしもいろんな顔を持っています。ときどき、その場その場でちがう自分に戸惑うこともあるのですが、どれが自分ではなく、どれもわたしの一部なんだなと思います。そして、いろんな面を持っていることに、今までどれだけ救われてきたでしょうか。

娘だって、お姉ちゃんになりたいし、まだまだ甘えたいし。ダイナソーにもなりたいし。ねこのママにもなりたい。ただ、子どもの持っているいろんな面を大事にしていったらいいんだ。そんな風に思えたら、大丈夫な気がしてきました。

さて、今日の娘はカンガルーになりたいそう。新聞紙とセロハンテープで耳とシッポを作るとします！

ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れし、スウェーデン人の夫と共に、2016年6月〜2017年11月まで住んでいた。現在は長野県松本市在住。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』（ワニブックス）「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」（オレンジページ）
instagram：@kuwabarasayaka

撮影：清水美由紀

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