【会話の楽しみかた】後編:沈黙もひとつの言葉。私も楽しい、が伝わればそれで充分です
編集スタッフ 野村
一言二言話をして、うまく会話が続かなくて沈黙が流れてしまうような時、相手を気まずくさせていないかなと不安になることがあります。
そんな時、もしこんな風に話せたらいいなと憧れるのが、ラジオパーソナリティーのクリス智子さんでした。
番組に訪れるゲストとのトーク時間は、クリスさんの相槌や会話の広げ方も心地よく、いつも楽しそうな雰囲気に包まれています。
そこでクリスさんのご自宅を訪ね、会話にまつわる悩みを相談するようなつもりでインタビューをしてきました。
後編となる今回は、クリスさんがラジオのお仕事を長く続けてきて感じたことなどを伺っていきます。
徐々にできるようになればいい、と気づいた
「GOOD NEIGHBORS」は、もうすぐ6年になる番組。そしてそれ以前にも、朝のラジオのパーソナリティーを10年半担当していたクリスさん。
実は、はじめからラジオでのトークが上手だったわけではないとお話してくれました。
クリスさん:
「この仕事を始めたきっかけは、人のご縁でした。ラジオの仕事をご紹介してもらって、オーディションを受けたのが最初で、自分からラジオをやりたいと思って始めたタイプではなかったんです。
もっとラジオのことが好きな人の方がこの仕事に向いているんじゃないかな、私には無理無理、と最初は割と引け腰で」
クリスさん:
「でも、仕事をし始めると、人の話を聞くことは好きだなとか、人の話を引き出すのが楽しいなとか、だんだんと仕事の中で自分が育てられていく感覚が生まれました。
仕事は、できる・できないじゃなくて、できるようになっていけばいいんだ、ということに気づいてからは、意識が変わったと思います。
まだまだこの仕事に向いていないなと思うこともいっぱいあるんです。でも、何もかも全部できる人なんていないし、何が大事なのか、を追求しているうちにここまでやってきた、という感じですね」
自分にはできている部分もたくさんあるはず
長年ラジオの仕事を続けてきて、徐々にできるようになればいいと歩みを進めたクリスさん。悩みを抱えたときにはどんな風に乗り越えてきたのでしょうか?
クリスさん:
「悩みは、誰かに相談するというのもありますが、自分で考えて、自分でもがいて乗り越えたことが多かったかもしれません。
仕事でいえば、始めたばかりの頃は、できなかったことに対して負の感情を持ち続けることが常だったのですが、そういった負のスパイラルに陥ると、もともとできることもいまいちになってくる。
なので、ある程度自分を認めてあげるようにして、その後にできていない部分を確認する。でも、そこにあまり感情は持っていかれないように。反省は短く、実践を長く。
生放送は翌日がすぐにきますから、悩んでばかりもいられず。そのあたりは鍛えられたと思います」
クリスさん:
「悩んだり、気持ちが不安定になったりするようなことがあった時には、呼吸や自分のリズムを整えることに意識を向けます。
特に、詩を読むと気持ちを整えるきっかけになるので、自宅の本棚にはいろいろな詩集を集めたコーナーがあって。なかでも長田弘さんの詩集は、じっくり自分と向き合えている気持ちになれてお気に入りです。
詩は、読む人によって読み方が何通りもあって、行間をどう読むかに、その時々の感じていることが表れるからこそ、自分なりの呼吸を整えられるように感じられるんですよね」
私も楽しい、が伝わればそれで充分
クリスさんとお話をしていると、まるでラジオを聞いているかのように、番組で知っているそのままの彼女がいらっしゃるなと感じられました。
そこでクリスさんにとって、ラジオと普段の会話とで違いはあるのかを尋ねてみました。
クリスさん:
「普段と仕事とで線引きはほとんどないですね。
スイッチが入るように急に自分のことを変えられないし、変わらない方が自分には合っているみたいです。長く続けてきて自然とそう感じてきているんでしょうね。
なので、もし今ラジオの生放送が始まっても私は大丈夫(笑)」
クリスさん:
「一緒にいる人との時間を楽しんでいれば、それで楽しい時間が生まれるのかなと思っています。
今あなたと会っているこの時間を私は楽しんでいますよ、ということだけ伝わればそれで充分。仕事の時も普段の時も、それ以上のことはあんまり望んでいません。すべてはそこからですから。
もし1対1の会話だったら、相手に頼るもよし。
自分でどうにかしなきゃって思うより、一緒にどうしましょうかと考える。それだけで、その時間がお互いにとってよかったなと思えることもあると思うんです。
嬉しい時も悲しい時も、感情は隠そうとしても外に出ちゃうもの。だから、あなたとこの時間一緒にいれてよかったなと思うことだけで、もうお互い『いい時間』を過ごす条件は揃っていると信じています」
そのままで、いいじゃないですか
クリスさん:
「ゲストの方とのトークでも普段の会話でも、『そのままでいい』と思っているんです。
お相手の方に対しては、たとえば、ゆっくりじっくり考えて話される方で、その場で沈黙が流れることがあっても、その沈黙もひとつの言葉として、静かなのもいいものですよね。
その方をそのままに受け取っていることが伝われば、あとは、自然の流れに乗れます。試してみてください(笑)
私自身、ガチガチにイメージされて話を振られるより、差し出してみたものを大事にしてくれる方が、やっぱり嬉しいです。
会話は、そういう思いやりを表現できるものかなと思います」
クリスさん:
「お互いが『違う』ということが面白くて、新しい出会いがある。そういうことをラジオを通して伝えたいです。
会話の中で、私とあなたは何が違うのか、どう違うのか、ということに興味を持つことですよね。もし、『違う』ということを避けてしまうと、会話に広がりは生まれない。
好きか嫌いか、とか、合う合わないと最初から決めてしまうことはもったいないと思います」
今回のインタビューが始まる前は、憧れのクリスさんを目の前にして、自分は会話が上手ではないしどうなるんだろうかと緊張していました。
でもこうしてお話をし終えた今、楽しかったなという気持ちがたくさん残っています。
そのままでいいじゃないですか、と私との違いをそのままに受け入れてくれたクリスさんの言葉と姿勢が伝わってきて、すごく励まされました。
お互いが違うという前提に立って会話ができれば、その違うということだけで話せることはたくさんある。あなたとの時間を楽しんでいますという姿勢でいることが、いい時間をつくる。そんなことに気づけました。
(おわり)
【写真】神ノ川智早
もくじ
クリス智子
大学卒業時に、東京のFMラジオ局 J-WAVE でナビゲーターデビュー。現在は、J-WAVE「GOOD NEIGHBORS」(月曜-木曜 13:00-16:00)のパーソナリティのほか、MC、ナレーション、トークイベント出演、また、エッセイ執筆、朗読、音楽、作詞なども行う。ハワイ、京都、フィラデルフィア、宮崎、横浜、東京と移り住みながら、現在は、海と山のある鎌倉にて生活。
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