【8年目なふたり】後編:会社でも、子育て中でも「それもありだね」と、思ってみる(二本柳 × 渡邉)
ライター 長谷川賢人
ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。
でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。
今回は、主に商品ページを制作しているストア編集グループで、マネージャーを務める二本柳と、お客さまからのご注文やお問い合わせの窓口であるコミュニケーショングループの渡邉が登場。
入社はともに8年前、年齢は違えど、実は「同期」のふたり。入社当時から主な業務は違えど、かけられた言葉やその存在に、お互いに支えられたときもあったそう。さらに、ふたりともクラシコムで産休を経験するなど、ライフステージも変わってきました。
そんな “8年目なふたり”、クラシコムで働いていくなかで、自身に「変わったこと、変わらないこと」はあるのでしょうか?
後編は二本柳が主に聞き手となって、渡邉に色々と質問してみました。
スタッフのみんなを見るのが、日課になっていって
二本柳:
渡邉さんは、一緒に入社した当時から憧れがありました。お買い物が好きなこともすぐに伝わってきたから、お洋服でも雑貨でも「どこで買ったんですか?」なんて、私はよく聞いてましたよね。昔から好きだったんですか?
渡邉:
小さい頃から雑貨を集めるのはすごく好きでした。お年玉をもらったら、地元の小さな雑貨屋さんやサンリオショップに行くのが定番で。
二本柳:
もう根っからの雑貨好きですね! どんなきっかけでクラシコムに入社を?
渡邉:
「北欧、暮らしの道具店」を知ったのは、北欧特集の雑誌で、昔あった実店舗の紹介記事を見たんです。その頃は前職の医療機器メーカーで海外向けの営業事務として働いていて、確か7年目くらい。「英語で海外の人と仕事がしたい」と就職して、楽しいこともあったけれど、時差もあったりするから結構忙しくて。
それに、医療機器だとやっぱり自分では使えないものですし、どこかのめり込めない感覚はあったまま働いていて。疲れて電車に乗った時、「北欧、暮らしの道具店」を見るのが毎日の楽しみになったんです。
渡邉:
そうしたら、雑貨好きの心が騒ぐというよりも、コラムなどから同い年くらいのスタッフたちが生き生きと仕事をしている感じが伝わってくるようになってきて。だんだんと「今日はあの人たちは何をしているんだろう?」と習慣的に気になり出しました。
あっ、でも通勤中に「今日はARABIAのパラティッシが発売されるんだ〜、ほしい〜!」とソワソワしたりすることはありましたね(笑)。
二本柳:
仕事が手に付かなそう(笑)。でも、パラティッシをあえて当店で買ったのはなぜだったんでしょう?
渡邉:
「フィットする暮らし、つくろう」というコンセプトだったり、仕事も暮らしも主体的に楽しんでいる様子ががいいなと感じていたから、「この人たちのお店から買うことで、自分にもそういうエッセンスが取り込めたらいいな」と思っていたんです。お買い物好きではあったけれど、クラシコムに入ってからは、さらに暮らしを整える楽しさに開眼しました。
クラシコムは、スタッフの人となりが分かっていたから、もう決め打ちで応募して、2回目のチャレンジで採用になりました。
毎日、本当に走っているような日々でした
二本柳:
渡邉さんは入社して2年くらい経った頃にお子さんを授かって。仕事が楽しくなってくる頃でしょうし、かなりの葛藤があったんじゃないかと思うんです。復帰も早かったですよね?
渡邉:
そうそう。結婚直後に転職して、2年後に出産ですね。妊娠した頃が、ちょうどチームの先輩が退職する時期と重なってしまって、会社に迷惑をかけてしまう……と不安で。
でも、代表の青木さんや店長の佐藤さんに伝えた時、第一声が「おめでとう!」だったんです。想定外の言葉に、泣きながら帰った思い出があります。それが本当にありがたかったから、とにかく役に立ちたい一心だった気がします。「お店やチームのためになることに、自分が持ちうる時間をちゃんと使いたいな」って。
渡邉:
当時は電車でオフィスまで通っているママスタッフがいなくて、そもそも社員も今よりずっと少なかったし、置いてけぼりになるのが怖かったんですね。純粋にみんなに会いたい気持ちもあったから、たしか生後5ヶ月くらいから子連れで月一回の全体会議に通ったりしてました。
子どもが9ヶ月くらいの頃に保育園へ数時間ずつ週2日ほど預けて、ちょこちょこ働かせてもらって、1歳になる間際で復帰しました。しかも社員が1.5倍に増えていて驚いたり。
二本柳:
本当に大変だったはずですよね。渡邉さんは、文字通りに毎日走っていました。
渡邉:
17時に仕事を終えて、17時10分発の電車に乗りたかったから。1時間半かけて通勤して、オフィスに着いたと思ったら30分も経たないうちに保育園からお迎え要請が来たことも。常に駆け足だったし、今となってはどうやって生活していたのかがわからないくらい(笑)。
とにかく当時のマネージャーも、チームのメンバーも、みんなが子どもと私のことを気遣ってくれていました。復帰のタイミング、福利厚生、働きやすい環境も一緒に考えながら整えていったんです。だけど、最初の半年は、子どもの体調不良や自分のブランクも重なって、思っていた以上に何もできなくて、だいぶ凹みました。
二本柳:
渡邉さんがそんなふうに思っていたなんて……。
渡邉:
でも、凹んでばかりじゃダメだなと徐々に思ってきたんです。周りのスタッフだって、フォローしている相手がずっと申し訳ない気持ちを抱えていたら嫌でしょうし、今後もママスタッフが増えてきた時に後ろめたさを覚えてしまうような雰囲気を、私が作ってしまうんじゃないかとも。
この状況のままでは悔しいし、それを子どものせいにしてしまいそうな自分も嫌でした。そもそも、思い通りにできる自分という像に執着しているのは私だけだ!って思ったんです。
だから、まずはできる範囲のことを全力でやろう、できないところはカラッと諦めて頼らせてもらおう、と切り替えました。「申し訳ないけれど、今はちょっとみんなに助けてもらいます。その代わり、ちょっと落ち着いたら、今度は私が助けます!」と仕事をするようにしました。それに子育てや介護など、理由はさまざまでも、今後だって誰かの支えが必要な時はあるはずですから。
今は、私がされて嬉しかったことを、真似ているだけ
二本柳:
忙しいはずの毎日でも、渡邉さんに会うと、おだやかで朗らかなんだなぁ、と感じられるんです。昔、お正月明けのオフィスで、みんなで書き初めをしたとき、渡邉さんが「朗らか」って書いていて、そうそう!ってなりました。
渡邉:
わぁ〜、懐かしい、私もよく覚えています。結構前のことだけれど、気持ちは今も変わらないですね。
二本柳:
でも、心の中は忙しくて。仕事がつらくはなりませんでしたか?
渡邉:
仕事は自分のためでもあったから、かなぁ。
仕事が終われば急いで帰って、子供の世話をしてから、一緒に寝ちゃう日もあれば、夜中に起きて食器を洗う時もあったり。でも、そういう毎日だからこそ、オフィスで仕事をしたり、スタッフ同士で会話をしたり、お客さまからいただくお便りが嬉しかったり。
お客さまのお問い合わせにお返事する時も、まるで手紙を書いているような気持ちだったりして。それはきっと、「お母さんではない自分」が、誰かと対等にコミュニケーションを取れることが、自分にも良い時間になってくれていたからだと思います。
二本柳:
お手紙みたいに、っていいですよね。
渡邉:
前職のとき、お客さまや現地法人の担当者とやりとりする中で、ちょっとした一言が嬉しかったのを覚えていて。相手の役に立てた時も、そうでなかった時も「すごく助かったよ」とか、終わりに「Have a nice day!!」と付けてくれるとか。些細なことですけれど、自分もそんな一言をかけてあげられる人になりたいと思ったんです。
二本柳:
忙しいだろうけれど、渡邉さんはすごく生き生きしてるように見えました。疲弊していないというか。前に、青木さんが「大変だなと思える渦中にいる人って、実は周りから見ると輝いて見えるんだ」と話していたんですけれど、本当にそうなんだろうなって。
渡邉:
境遇は違えど、オフィスの中にも、発信している読み物の中にも、お問い合わせやお便りをくださるお客さまの中にも、同じくらい日々に向き合っている人がいるということも励みになってましたね。「私だけじゃないんだ」と思えたのは大きかったなぁ。
それに、子どもと一緒にいると、周りの人のやさしさや気遣いに触れることも多くて。些細なことでも、きっとその人が思っている何倍も救われてきたんですよね。だから今は、私がされて嬉しかったことを、真似ているだけです。「恩送り」というのかな。
「それもありだね」と思えるようになって
二本柳:
思い返してみても、8年なんてあっという間ですね。
渡邉:
本当にね。今のチームだと、私が年次が一番になっちゃった。しっかりと、これまで通りにやっていきたいし、長くいるからこそ、みんなに安心感や働きやすさを感じてもらえるようにしたいな、とは思っています。
二本柳:
渡邉さん自身がもっとやってみたいことって、ありますか?
渡邉:
う〜ん……ここでバシッと言えたら、かっこいいんだろうなぁ(笑)。
でも、自分の行動がチームの雰囲気にも影響するんだろう、とは考えていて。クラシコムが、自分たちが守っている家みたいなものだとしたら、私が不機嫌だと周りの人も不機嫌になっちゃう。お店の雰囲気が悪くなってきてしまえば、結局はお客さまのご迷惑になってしまうかもしれない。
もし、今の私に「朗らか」と思ってもらえているのだとすれば、そういう自覚があるからかも。私自身が朗らかな場所に行きたくてクラシコムを選んだから、それは大事にしていきたいです。
二本柳:
「北欧、暮らしの道具店」を、居場所の一つとして感じてくださっているお客さまも、きっといらっしゃるはず。自分たちも、お客さまも、「この場所がいいな」と思ってくださるようにし続けたい、という責任感めいたものを、それぞれが持って仕事をしているように感じます。
渡邉:
そうだね。みんながそれを自分ごとにして、考えながら動いている。
この前、ちょうどチームで合宿した時に、自分たちが仕事をする上で大事にしたいことの一つに「納得する」というのが出てきて。お客さまとやり取りする中で、もちろんできる限りご要望や期待に応えたいけれど、全てご満足いただくことは難しい場面もあります。
でも、自分たちの納得感が揺らいでしまうと、お客さまからご意見をもらっても、「私はそうは思っていなかったのにな」と感じてしまったり、判断基準も他人のせいにしてしまったりするかもしれない。
人対人のコミュニケーションだから、上辺じゃなくて、お客さまからいただくお声と自分が決めたことを咀嚼して、納得した上で伝えたい。だから対応方針を決めるときも、その伝え方も、違和感があるときは何度も、時に他のスタッフにも相談しながら巡るようにしています。
二本柳:
納得感って大事ですよね。ある種の素直さはきっと伝わるし、納得できないのは自分にとってもストレスだから。私も何かあったときは心の底から「ごめんなさい」を言える状況には常にしておきたいな、とは思っています。
渡邉:
相手の考え方も自分で推し量れるようになった時に、とても「クラシコムっぽいな」と思えたんです。いろんな人がいていいよね、いろんな仕事の仕方があってもいいよね、みたいに「拒まない感じ」は居心地がいいなと思って。
以前に、当店からのメルマガで「それもありだね」という言葉をテーマにしてみたことがありました。自分と答えや思いが違っても、相手の言うことを一旦受け入れてみるんです。
二本柳:
「それもありだね」って、いい言葉です。
渡邉:
会社でも、子育て中でも、家族でいる時でも、自分と考えることが違ったりしても「それもありだね」と、ことあるごとに思ってみることが増えました。
やりたいこと、とは違うかもしれないけれど、自分が仕事で大変な思いをしたときに、それを後輩社員にも同じように苦労させて学ばせるのではなくて、まずは困らないようにしてあげたいですね。私は先頭でリーダーシップをとるのは苦手だけれど、自分なりの方法で、みんなを支えられたらいいな。
【写真】川村恵理
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