【連載エッセー『たゆたゆ – くまがや日記』】第五回:紡ぐ
山本 ふみこ
「まるで物語のようですね」
ということばが飛びこんできました。
ここ「たゆたゆ」の広場に向けて、これを送ってくれたのは、クラシコムのマリエさんでした。
物語、物語、物語。
このことばがわたしのなかに、ひろがってゆきます。
エッセイ・随筆にも物語は必要なんだとあらためて気づかされた瞬間でした。描きだす対象が日常だとすると、日常には物語がいっぱいですもの。
物語、物語、物語。
日常の物語を大事にすくいとって描いてゆくためには、とわたしは考えています。
ひとりのひととして、物語を紡ぎながら生きる。
── これだ、と思いました。
目覚めたときに胸のなかにひろがる感情。白湯からたちのぼる湯気。ラジオのなかの笑い声。廊下の多肉植物たち(花を咲かせたものあり)。cream stew(クリームシチュウ)をつくったというバンクーバーで暮らす末娘からのメッセージ。読みさしの本の1行。カラスの鳴き声。102歳の友人からの便り。
……ほんとうに物語だらけです。
こんなことひとつひとつにこころをとめて、目を凝らしたいなあ。
東風解凍[はるかぜこおりをとく] ─── 七十二候2月4日〜8日ごろ
春風が厚い氷をとかしはじめる季節、旧暦のお正月のようなときがめぐってきました。
いまのいま、自分にできること、してみたいことに、あらためて目を向けましょう。
物語、物語、物語。
田んぼでは麦の芽が、青青とのびてきました。ここにもそこにも物語があふれています。
わたしも、光に向かう紡ぎ手になろうと思います。
文/山本ふみこ
1958年北海道小樽市生まれ。随筆家。ふみ虫舎エッセイ講座主宰。東京で半世紀暮らし、2021年5月、埼玉県熊谷市に移住。暮らしにまつわるあらゆることを多方面から「おもしろがり」、独自の視点で日常を照らし出す。最新刊『あさってより先は、見ない。』(清流出版)、ほか著書多数。
http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
https://www.fumimushi.com/うんたったラジオ/
写真/丸尾和穂
岡山県生まれ。シグマラボ、代官山スタジオ勤務を経て2010年独立。インスタグラムは @kazuho_maruo
https://067.jp
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