【しなやかな家】03:家づくりは終わらない。家族のステージに合わせてゆるやかに変わる住まい
葉山に暮らすギャラリーマネージャーの関田四季(せきた しき)さんが住むのは、うつろう暮らしにも柔軟に対応できるしなやかな家。
竣工から8年経った今もしなやかに変化し続ける、豊かな自然をたっぷりと感じる開放的な住まいを訪ねました。
第1話では家づくりの経緯やこだわりについて、第2話ではキッチンとダイニングについて聞きました。続く第3話では、今年の夏に改装したという寝室と子ども部屋についてじっくり伺います。
この夏、大人と子どもの部屋を交換しました
玄関を入って右側、2階建ての1階部分には夫婦の寝室と関田さんの仕事場があります。
日差しがたっぷり入るので真冬も暖房いらず。思わずまどろんでしまいそうな気持ちのいい空間です。
関田さん:
「今年の夏までこの部屋はホビールームと呼んでいました。大きな棚でもっとしっかり空間を区切っていて、奥には長男の部屋があったんです。
そのまま行けば手前のスペースは娘の部屋になるはずだったんだけれど、ここって家の中でも特に気持ちのいい場所で……」
関田さん:
「子どもたちは学校や習いごとで家にいる時間が少ないですし、親が過ごす場所もむげにしたくなかったので、思い切って2階を子ども部屋に改装することに。そうして2階にあったマスターベッドが降りてきたわけです。
家族のステージによって空間が変わっていくのは必須だと感じていたので、それに順応する住まいを作ることは設計の段階から意識していました。
今回の改装も、壁ではなく棚で空間を仕切っていたからこそできたことだったと思います」
関田さん:
「この部屋、特に5月ごろが最高なんですよ。湿気がなくカラッとしていて、虫もいなくて。
そんな日には庭に面した窓を開け放って、まるで外にいるみたいな気持ちで仕事をしています」
色もテイストもバラバラの雑貨たち。素敵に飾るには
そんな寝室と仕事場をゆるやかに区切っているのも、やはりオーダーメイドの棚。
アイアンと木材の組み合わせが素敵ですっかり部屋に馴染んでいますが、実は意外な仕上がりだったそうです。
関田さん:
「空間を仕切りたいということと、木製よりは金物のイメージであることは伝えていたのですが、初めて届いた日は『こうきたか!』と思いました。昭和のパブのようなミッドセンチュリーのような斬新なデザインで。
でも、これをどう空間に馴染ませようかな?というワクワク、楽しみの方が大きかったです。
全部に本を置いてみたりもしたけど圧迫感があってしっくりこず、今のバランスになりました」
▲祖母の家にあったというイギリス製のシノワズリの壺。可愛くてもらってきたそう
関田さん:
「置いてあるオブジェはインテリアショップやアパレル時代に各地で買い集めたものがほとんど。現行品もあれば、蚤の市で買ったものも、祖母の家で見つけたものもあって本当にバラバラです。
飾る際は、隣合うアイテムの高さを揃えずあえて凸凹させたり、同じ色のものを近くに配置することを意識しています。
ほんのちょっとの工夫だけれど、空間に動きが出てバランスよく見えますよ」
▲仕事机は、前の家から長年使ってきた〈Artek〉のテーブル&チェア
関田さん:
「あとはやっぱり我が家のインテリアは色がキーになっていそうです。赤黄緑青みたいな原色系のパキッとした色が好きで、自然と集まっているみたい。
この家は木造なので内装はウッドカラーが基調、アクセントのタイルやスチール部分も比較的シンプルな色味を使っています。だからこそ色で遊ぶ余地があるし、8年住んでも飽きずにインテリアを楽しみ続けられているのかもしれませんね」
「部屋じゃない」子ども部屋って?
最後にやってきたのは今年の夏に改装した2階の子ども部屋。
手前が中学生の息子、奥が小学生の娘のスペースで、ここでも間は簡易的な壁でざっくりと仕切られていました。
関田さん:
「子ども部屋問題、本当に悩みました。元々子どもが小学生くらいまでは個人のスペースを持たせず、宿題も家族がいるリビングでやる環境がいいなと思っていて。
それもあって家全体をこんなに開放的な間取りにしたんです。何が何でも閉じこもらせないぞって(笑)。
だけど息子が中学生になると、大事なテスト前などに集中して勉強ができる場所が必要になってきました」
▲壁側に2段ベッドを造設することで、ドアはなくてもプライベート感のある空間に
関田さん:
「それでこの機会に子どもたちそれぞれのスペースをまとめて作ってしまおうということになったのですが、何しろ2階は限られたスペースです。
息子はこれから思春期ですしドアのある完全なプライベート空間を作ってあげた方が良いのかな?ともよぎりましたが、それだと本当にクローゼットみたいに小さな箱になってしまう。
広くない空間を2人でどうやって使わせるかを考えた結果、今の我が家にとってはこれが究極のプランだねという結論になりました」
関田さん:
「だけど、これもあくまで今の家族の最適解です。成長するにつれてもっとプライベートな空間が必要になるかもしれないし、進学や就職で家を離れる日だってきっと来ますよね。
そうしたら2階をまるごと娘が使うようになるのかもしれないし、親の方が戻ってくることもあるかもしれない。必要な時が来たらまた考えようと思っています」
家も季節も、うつろうのが面白い
関田さん:
「この家に越してきて一番良かったのは、家にいながら季節のうつろいを身近に感じられるようになったことです。
季節によって咲く花や木々に止まる鳥、日の入ってくる角度が変わること。40代になった今そういう自然の変化に敏感になって、それだけで十分面白いと思えるのがすごく嬉しいんです。
駅から遠い分バスと車が必須で子どもの送り迎えに奔走する毎日ではあるけれど、慣れてしまえばどうってことありません。その苦労を上回る豊かさを感じながら生活しています」
関田さん:
「暮らし始めて8年が経って比較的大きな改装もしたけれど、家づくりはまだまだ終わりそうにありません。
庭担当の夫は小さなお花畑と小道を作ろうと週末のたびに庭いじりをしているし、寝室の壁に大きな本棚を作る計画もあります。
初めから全部完璧じゃなくてもいい。暮らしながらその時々のニーズに合わせてブラッシュアップしていくやり方が私たち家族には向いているみたいです」
関田さんの家はどうしてあんなに居心地よく瑞々しかったのだろうと、取材を終えてからよく思い返しています。きっと、土地柄や建物の物理的な余白だけではないはず……。
それは、家族のステージや日常の変化を敏感にキャッチして、今あるものやこれから必要な場所を「今の自分たちの最適解って?」と根気強く見直しているからこそ生まれたものなのかもしれません。
いますぐ家づくりをする予定はないけれど。これはどういう役割のものなんだっけ? ここはどういう場所なんだっけ? 何気ない買い物ひとつでも焦らず考えてみることから、理想のインテリア探しを始めようと思いました。
【写真】土田凌
もくじ
関田四季
東京都出身。大学で建築を学んだ後、インテリアショップ〈IDÉE〉、アパレルのVMDを経て、現在は都内のギャラリーでマネジメント業に携わる。知る人ぞ知るキッチン用固形洗剤の名品「ミスターQ」正規代理店の代表も。Instagram:@shikikuma
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