【変わっていく自分を支える、くらしの相棒】第1話:ベランダガーデンのたのもしい助手
四十代、五十代は、家族構成や生活環境、心身の調子など、変化の多い時期だなあと、最近実感しています。
10年前に比べて、体力が落ちてきたり、食べる量も変わっていたり。「まだまだこれからよ」とは言われるけれど、以前のようにいかないことも増えてきます。
健やかに暮らしていくためには、「変えていくこと」と「変えないこと」のバランスが大事なのかもしれません。
料理家のこてらみやさんも、この10年間は大きな節目の連続でした。都心のビンテージマンションに暮らして約23年。同じフロアに暮らしていた義父母を介護し、2年前に夫を見送って、いまは一人暮らし。そうした変化を受け入れながら、日常を紡いでいます。
こてらさんに、この10年間で「新しく取り入れたもの」と、「変わらず大切にしているもの」についてお伺いしました。同世代で、長くおつきあいがありますが、こうしたことをお訊ねするのは初めて。少しドキドキしながら、玄関のベルを鳴らしました。
育てて収穫して、レシピを考えるベランダガーデン
こてらさんの住まいは、古いものと新しいものが混じり合って、独特の空気を醸しています。
骨董商だったお父様が扱っていた東洋趣味の家具や、骨董の器。夫の愛用していたギター。友人や知人が描いた絵やオブジェ。落ち着いたインテリアのなかに、おサルをモチーフにしたクリップや、キューピーの人形など、くすっと笑ってしまうアイテムもちりばめられています。いきいきしていて、あたたかいのです。
なかでも目を引くのは、60平米ほどある、広いベランダです。最上階なので、日当たり最高。たくさんの植物がいきいきとツルを伸ばし葉を広げていて、まるで秘密の花園です。
食べられる植物が多いのも、このガーデンの特徴です。柑橘にハーブやしょうが、ワイン用のブドウ品種のカべルネソーヴィニヨンまで。収穫の時期ともなれば、大忙し。レモンを塩レモンやシロップにしたり、ハーブを瓶詰めにしたり、しょうがで漬けものをこしらえたり。
こてらさんの著書におさめられている、保存食や瓶詰めのレシピは、このベランダガーデンがあったからこそ生まれてきたといえます。
夫との思い出が、緑とともに息づく場所
このベランダは、夫のノブさん自慢の場所でした。「NOBURIN’s GARDEN」と名付けられたこのガーデン、越してきた当初は物置が置いてあるだけで、がらんとした空間だったそう。それでも植物を愛するノブさんが鉢を増やしてせっせとお世話するうち、現在のような緑あふれる場所となったのです。
晴れた日には夫婦でベランダに出て、草花を眺めながら食事をとります。友人知人を招いて、ベランダでバーベキューをすることも。
一番の古株は、30年もののビワの木。このマンションに越してくる前、いただいたビワがおいしかったので、植木鉢に種をまいたところ、大きく育ち、甘い実をつけるようになりました。この家を見守るシンボルツリーです。
ベランダには、一時期は300鉢ほどが旺盛に葉を茂らせていたといいます。水やりだけで一仕事。夏場ともなると朝は4時から、日に3回はやらないと追いつきません。それでも、手をかけるほどに応えてくれるベランダの草花を、ノブさんは愛おしんで世話をしていました。
ひとりになっても、大切な場所を維持するために
いま、植物の世話はこてらさんが担っています。
ノブさんが病を得てからは鉢の数を減らしましたが、それでも150鉢はあるでしょうか。仕事も家事もあるし、体力的にもだんだんときつくなってきたので、1日中ベランダにいて世話をするわけにもいきません。そうはいっても、どの植物にも思い出があり、思い入れがあるのです。
そこで最近導入したのが、ドイツの園芸用品メーカー『ガルデナ』の自動散水システム。
こてらさん:
「昨年5月に、韓国へ旅することになって買いました。いまや、助手ですね。それまでは植物の世話があるので、長く家をあけることができなかったんです。やむなく2泊以上家をあけるときは友人に水やりを頼んだりして」
タイマーをかけておくと、決まった時間に水がでてきて、ホースを介して鉢に水を配ってくれる仕組みになっています。
もちろん、「助手」に任せっぱなしにはしません。というのも植物はひとつひとつの性質が異なっていて、なかには「もっと水を飲みたい」という植物もいるからです。
在宅中は、自動散水のあと、こてらさんがひとつひとつの鉢を見て回り、じょうろで必要なだけ補っています。鉢の中をのぞきこみながら新芽を見つけたり、花がらをとったり、次の季節に向けた準備を考えたり。手も心もよく働かせながらの庭仕事、終わったあとに飲むお茶のおいしいこと!
「夫がいたら、『散水システムのホースが美しくない』と言うんじゃないかな」と、こてらさん。
ノブさんの声が聞こえるような気がしました。
けれども一方で、身軽に旅をして世界を広げていくこてらさんの姿に、いいぞ、いいぞ!と嬉しそうに応援するノブさんの顔も目に浮かぶのです。
ネットストアを賢く使って、暮らしの相棒探し
『ガルデナ』の散水システムは、ネットストアで購入したそう。
日用品を探すときには、ネットショッピングを活用しています。若い頃はお店を回って探し歩きましたが、いまは体力を使いすぎて疲れてしまうし、せっかくお店に行っても、店頭に並んでいないこともあります。その点、ネットストアは確実。
「ただし、本当に必要なものしか買いたくないから、しっかり調べます」とこてらさん。
気になるものがあったら、評価の高いコメントから低いコメントまで目を通し、身近に使っている人がいれば感想を尋ねます。いざ購入を決めたら、いくつかのサイトを見比べて、よりリーズナブルなほうを選んで購入。
台所用のふきんや洗剤は、こんなふうにネットを駆使して、お気に入りを見つけたそう。
こてらさん:
「無香料の洗濯洗剤なら、ファーファの『香りのない洗剤』が、洗浄力があっていまのところベスト。週に一度、施設に入っている義母の洗濯物をとりにいくのですが、香料のある洗剤は使いたくないんですよね。これはいいよ、と友達にもすすめています。
オキシクリーンもいいですよね。ただし海外版ではなくて日本版のほうが、界面活性剤が入っていなくておすすめ。うちでは、使った台ぶきんを夜の間オキシクリーンに浸け置きしておくんです。朝になると白くなっていて、すっきりしますよ」
わー、さっそく私も使ってみたい! メモをとる手が止まりません。
さらにこのあと、意外な「助手」を紹介してもらいました。そのことについては、つづく第2話でご紹介しましょう。
【写真】井手勇貴
こてらみや
料理家・フードコーディネーター。シンプルな調理法で素材のおいしさを引き出す料理を得意とする。ライフワークは、旬の食材でびん詰めを作ること。著書に、『料理がたのしくなる料理』(アノニマスタジオ)、『生姜屋さんとつくった まいにち生姜レシピ』(池田書店)、『365日、おいしい手作り!「魔法のびん詰め」』(王様文庫)、『レモンの料理とお菓子』(山と渓谷社)、『まいにち お漬けもの』(世界文化社)など。Instagram:@osarumonkey
感想を送る
本日の編集部recommends!
はじめての相棒
やっと出会えた!見た目も使い心地も、親子でお気に入りになる「ランドセル」[SPONSORED]
春のファッションアイテムが入荷中です!
心はずむ春色のニットや、軽やかに歩けるイージーパンツなど、今おすすめのアイテムが揃っています。
食卓を彩る、春にぴったりの器集めました
ひとつ迎えるだけで、気持ちがパッと明るくなる器たち。春から新生活を始める方へのギフトにもおすすめです
【動画】1時間あったら、なにをする?
学ぶ楽しさを再発見。大人になって始める習い事(スタイリスト・伊東朋惠さん)