【40歳の、前とあと】早坂香須子さん 第3話:人生を変えるのは、”やる” か ”やらない” か。
ライター 一田憲子
写真 砂原文
「すべての女性はきれいになれる」と教えてくれる、メイクアップアーティストの早坂香須子(はやさか かずこ)さん。
第1話はメイクアップアーティストになるまでを。第2話は40歳で迎えた転機を語っていただきました。
最終話の今回は、これからの夢についてお話を伺います。
悩んでいたからこそ「自分が見て、知り、感じたこと」を、シェアしていきたい
△独立直後の26歳の早坂さん。
今でこそ、底抜けに明るくてポジティブな早坂さんですが、「自分を自分で認めてあげられない時期が、すごく長かったんです」と語ります。
早坂さん:
「自分の容姿に自信がなかったし、仕事もプライベートも、何一つ思い通りにならないと思っていました。
ここを目指したいと思うところと、そのときの自分のギャップが大きくて、常に自分に駄目出しをしている状態。周りにも不平不満ばかりいっていましたね。
本当は、目の前のことをひとつひとつこなしていけば、絶対に目指す場所へ到達できたはずなんです。でも、そのことがなかなか理解できず、『そこ』へ行けないことへのイライラが爆発していて、とことん嫌なヤツになっていました。
不平不満があるときって、食もおざなりになるんですよね。菓子パンをいっぱい買ってきて、すべて食べつくして、激しく後悔したり……」
早坂さんに、そんな時期があったなんて! そして、そのことを正直に話してくださる率直さにも驚かされました。
最初からうまくいった訳ではないからこそ、「うまくいかない」人の気持ちがわかる。そこからどう心の持ちかたを変化させ、前を向けばいいか、一歩の踏み出しかたがわかる……。
早坂さんの「きっと大丈夫」というメッセージには、痛みを味わってきたからこその、優しい目線が含まれています。
人生がうまく回り始めるか、停滞したままか……。その違いを生むのが「腹をくくって自分で動く」ということ。そして、早坂さんにとって「動く」ことは、自分が見て、知り、感じたことを、すべての女性達とシェアすることでした。
早坂さん:
「『ああ、きれいだなあ』と感じる人達と出会うたびに『きれいってなんだろう?』と考えてきました。そして、『ああ、 “きれい” ってひとりひとりがみんな必ず持っているんだ。あとは、それを生かすことだけなんだなあ』と実感したんです。
そして、私みたいに悩んでいる人もきっと多いはずだから、いろんなアプローチで『自分の “きれい” の見つけ方』をシェアできたらいいなあと思うようになりました」
人生の転機にもなった「SHIGETA」との出会い
△早坂さんがプロデュースした「エプソムソルト」の入浴剤は、四季と月のリズムに女性のバイオリズムを合わせオーガニックの精油で作ったもの。左は「SHIGETA」の「UVパーフェクトローション」。日本人の肌の色に合うライトベージュとミディアムベージュの2色。
昨年、早坂さんはオーガニックコスメのブランド「SHIGETA(シゲタ)」とのコラボレーションで、日焼け止めのBBクリームを開発しました。
ブランドを主催するCHICO SHIGETA(チコ・シゲタ)さんのことは、彼女のトークショーを聞きに行って初めて知ったそうです。
早坂さん:
「知り合いのセレクトショップの方に呼んでいただいて、彼女のトークショーを一番前の席で聞かせてもらいました。
マッサージオイルの使い方を説明してくれたのですが、『ひざ下のマッサージを教えます』と言われて、ちょうど私は短いパンツをはいていたので、CHICOさんの言う通りにその場でやってみたんです。
その日撮影の後に駆けつけたから、結構むくんでいたんですが、たちまち足がす〜っと引き締まってびっくり! まわりにいるみんなで『すごい、すごい!』って大騒ぎしていました(笑)それを機に、SHIGETAのオイルを全部買って、仕事に持ち込むようになったんです」
早坂さんのブログやインスタグラムにファンが多いのは、紹介するものはすべて、ご自身で買って使ってみて、「いい」と実感しているものばかりだから。
「これはいい!」と感じたときには、それがいかに高価なものであっても、即買い! そのアンテナの鋭さと、素早い行動力には驚かされます。
△メイクの仕事に欠かせない道具のひとつ、アロマにもSHIGETAのオイルを揃えているそう
早坂さん:
「仕事に持ち込んでいたら、さっそく道端ジェシカさんが『これなに?』と素早く反応して……。彼女は勉強家だし、自分をきれいにしてくれるアイテムに目がないんですよね。説明をしながらマッサージしてあげたら、すぐに気に入ってくれました」
その後、道端さんを介してCHICO SHIGETAさんと知り合い、「一緒にコスメを作りませんか?」と声をかけてもらったそうです。
当時、オーガニックで気にいる使用感のUVクリームがないと感じていた早坂さん。さっそく日本人に会う色で、オーガニックのUVのBBクリームづくりにとりかかることになりました。
早坂さん:
「『SHIGETA』は、フランスのブランドで生産もパリで。だから、艶という概念をフランス人に説明するのに時間がかかりました。フランスまで行って、『こっちはテカリだけど、こっちは艶』と説明して。
私は科学者ではないので、『ちょっと青い』とか『ちょっと黄色い』というのもなかなか伝わらないんです。『香須子の ”ちょっと” がわからない』と現地では、カラーメーターまで導入してくれました」
こうして3年間の月日をかけてやっと完成。日本人の肌に会う2色のクリームは、たちまち評判になり大ヒット商品となりました。
早坂さん:
「作っている最中に、CHICOさんが『売れなくちゃつまらないから、売れる商品を作りましょうね』と言ったんです。
正直、それまでの私にはそんなビジネス的な視点がまったくありませんでした。『いいものができればそれでいい』ぐらいに思っていたんです。
でも、彼女は『絶対に売れるものを作ろう』と、そのために努力も追求もする。そんな姿を見ているうちに、私も本気になって、何十回も顔を洗ってクリームを塗ってみて、昼と夜の光の違いを試したり、顔がカピカピになりました(笑)。
でも、そうやって腹をくくって本気を出したとき、思いもよらない奇跡が起きたんです。みずみずしいのに水に強い……。つけた瞬間に水とオイルが逆転するような分子構造が見つかったり」
新たなオーガニックコスメづくりに挑戦
今、早坂さんはコラボレーションで、日本の農作物を使っての、新たなオーガニックコスメづくりに取り掛かっているそうです。
早坂さん:
「国内の自然栽培の農家さんを訪ねたり、後継者がいないために放置されたみかん畑などを管理している行政ととつながりながら、国内のいいものと、私が海外で見つけたその土地土地のオイルを使用して作ろうとしています。
だから、今、日本各地の農家さんたちに会いに出かけているんですよ。
使えば使うほど、自分の肌も気持ちもきれいになる。そしていつの間にか、自分の住んでいる日本の土壌も美しく豊かになる。そんなブランドを目指しています」
40歳の誕生日を迎えた、ある島のおはなし
△「あなたは、あなたが食べたものでできている、という英語のことわざがあるんですよ」と早坂さん。体調に合わせて有効成分を多く含む「サンフード」のスーパーフードを愛用しているそう。そのほか「ハイゲンキ」のビフィズスやビタミンC、「アムリターラ」の還元力ミネラル水素液・タイムレスビューティー
最後に早坂さんは、40歳の誕生日を迎えた沖縄の島の話をしてくれました。
早坂さん:
「いろんな人に、沖縄にすごい島がある、と聞くようになったんです。
そこは何かが生まれる場所らしい……。たまたま同じ誕生日の友人と、だったら、誕生日の日にその島へ行こう!という話になって……。
その友人は、仕事人間だったけれど、どうしても家族が作りたい、と思っていました。そうしたら、彼女は帰りに立ち寄ったお店で出会った男性と恋に落ちて結婚しました! そして私は子宝の島だと聞いていたので、子宝を願ったら、本が産まれました。
でもね、その話を聞いた知人たちが、その後何人もその島へ行ったんだけど、何も起こらなかった……。
彼女とは、会うたびにこんな話をするんです。『やっぱり私たち、誕生日の日にあの島で、腹を決めたんだよね』って。あのとき、私は本を作るなんて思ってもみなかったけれど、「何かを生み出すぞ」と腹をくくったんだと思います。
無意識にそれが仕事だったんですね。おかげで1冊目の本は自分の分身のような気がしています。腹を決めて行動をした人だけが、到達できる場所がある。だたそれだけだよねって」
「やる」。
たった2文字のこの行動の力を早坂さんは、ご自身の長い長い物語と共に私たちに教えてくれました。
夢見たり、悩んだり、躊躇したり、ため息をついている間に、できることをひとつでも見つけて「やって」みる。
淡々としたその行動が、人生を動かす大きな力になる。
たった2文字から、これからの人生がキラキラ輝くとしたら……。私が今できることを、真剣に探してみたくなりました。
(おわり)
メイクアップアーティスト 早坂香須子
看護師として大学病院に勤務した後、メイクアシスタントを経て99年に独立。国内外のモデルや女優から支持されている。元看護師という医学的知識と観点から、インナービューティー、オーガニックプロダクトコンサルタント、香りなど、多岐にわたりビューティーの提案をしている。近著に『100% Beauty Life 早坂香須子の美容AtoZ』がある。
ライター 一田憲子
編集者、ライター フリーライターとして女性誌や単行本の執筆などで活躍。「暮らしのおへそ」「大人になったら着たい服」(共に主婦と生活社)では企画から編集、執筆までを手がける。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、多くの取材を行っている。ブログ「おへそのすきま」http://kurashi-to-oshare.jp/oheso/
▼早坂さんの著書はこちら。
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