【フィットする暮らし】BROCANTE 松田尚美さん 第1話:思わぬ転機。30歳で店主と母親になって。

編集スタッフ 齋藤

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「今の暮らしは、自分にフィットしているなぁ」

わたしたちが心からそう感じられたとき、きっと他人のモノサシではない ”自分” の基準で選びとったスタイルがあるのだと思います。

シリーズ「フィットする暮らしのつくり方」は、そんな自分らしく心地いい暮らしをつくっている方を取材し、暮らしのヒントをお届けする読みものです。

vol.14となる今回は、自由ヶ丘にあるフランスの古道具を取り扱う「BROCANTE(ブロカント)」の店主、松田尚美(まつだ なおみ)さんに登場いただきます。

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自由ヶ丘駅から徒歩10分程度、路地を少し入ったところに「BROCANTE」はあります。

ブロカントとは、フランス語で「古道具」を意味する言葉。

雑誌や当店の読みものでも「BROCANTE」を耳にしていた私は、松田さん夫婦が作り出す世界に、魅了されたひとりです。

植物に囲まれ作り出される瑞々しく新鮮な空気の中に、古い家具や雑貨が深い趣を放っている。その対比とそして調和に、思わず溜息がもれました。

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私の中で松田さんのイメージは、「好きなもの」に囲まれて暮らしている人。ご自分のお店もあってお子さんもいて、「自分のしたいことを全て叶えた人」だと思っていたのです。

でもお話を聞いてみると、「本当は専業主婦になりたかった」と返ってきました。

確かに「好きなこと」を仕事にし、そして「好きなもの」に囲まれてもいる。

けれどそこには「自分本意」であることが必ずしも「自分のやりたいこと」とは限らないという、松田さんの想いがあるように感じられました。

多くの人や物事と接し、その期待や想いに応える中で、それでも静かに輝き続ける「松田さんらしさ」の秘密に迫ります。

 

「夫が物件を見つけてしまって……」突然はじまった店主と母親。

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30歳で「BROCANTE」の店主になった松田さん。はじめて授かったお子さんはその時まだ生後6ヶ月ほど。不安だらけだったといいます。

松田さん:
「私はすごく漠然としている性質なので、自分のお店を出したいという気持ちは全くありませんでした。でも子育てがしたかったから、できれば養ってほしいと思っていたくらい。

専業主婦だった自分の母のようにいつも家にいて、お菓子を作ってくれる母親像が理想でした。けれど夫の母親は外で働いていた人。『女性が家で何をするの?』という考え方だったんです」

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松田さん:
「フランスに行って、家具や雑貨はよく買ってきていました。当初の予定では、夫が造園の仕事をしているので、雰囲気の良い打ち合わせ場所を作るための什器として使おうと思っていたんです。

それがある日、夫が自由ヶ丘で物件を見付けてしまって。

とてもステキでしたが、問題は家賃。でもやっぱり出会いだからと思い切りました。ただ、打ち合わせ場所としてだけ使うわけにはいかなくなり、什器にしようと思っていた家具などを販売する、お店をはじめることになったんです。

私の両親は元々自由ヶ丘で暮らしていたので、その時の思い出もあり、母はとても喜んでいました。なんだか周りが盛り上がってしまったんです」

大学を卒業して4年間アパレルの販売を経験後、30歳を機にそろそろ子どもが欲しいと思うように。そしてそのタイミングに重なるように、お店もスタートしたのでした。

 

とにかく来た船に乗るしかない!

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松田さん:
「しばらくの間は目の前に来た船に乗るしかない!うまく船を漕ぐしかない!もうそれだけ。

販売の経験があったので、お店の運営自体はあまり心配はしていなかったんです。ただ育児との両立となると、はじめてのこと。それだけがずっと気がかりでした。

育児をしながら接客をして、あまりの忙しさに一回倒れたんです。『あぁなんて結婚生活を選んでしまったんだろう』って、その時は思いましたね」

3年間ほどは、店の奥で子どもの面倒を見ていたそうです。慣れない育児との両立で仕事も満足のいくようにできず、つらかったといいます。

松田さん:
「もう逃げ出してしまおうかと思った時もありました。

でも長男を保育園に預けるようになり、前よりも仕事に時間をかけられるようになったんです。

そしてお店のHPを作ってからは取材も受け、お客さんも増えたように思います。そうやって少しずつ、お店も育児も軌道に乗ってきたんです」

 

ブロカントだからこそ、誰もが楽しめる気がして。

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松田さん:
「花が好きで、大学でインテリアの勉強をする傍ら、ダブルスクールで花のアレンジを習っていました。そこの先生がアンティークの器を貸してくれたことが、古いものを好きになったきっかけでしたね。風合いのあるものと生き生きとした花の組み合わせに、魅了されたんです。

当時都内にあるアンティークショップはアメリカンカントリーが主流。値段も自分たちでは買えないほど高かった。

でもフランスに行ってみたら、ステキな風合いの物が私たちにも手の届く値段で売っていたんです」

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松田さん:
「美術品を置いて『この美しさが』なんていう売り方もあります。ただそういったものは限られた人のものになってしまう気がして。

私は来てくれた人みんなに『気に入ったから持って帰りたい』と感じてもらい、そしてそれができる場所を作りたかった。だからここでは、数百円で買えるものからおこうと決めました。

フランスへ行くと、みんな思い思いに自分が良いと思った古いものを楽しんでいます。そうしたスタイルも、ここに来て感じてもらえたらと思ったんです」

 

「美しいガラクタ」がつくる、松田さんの世界。

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ブロカントの語源は「美しいガラクタ」を意味する言葉だという説もあります。「ガラクタ」というといらないもののようですが、誰かにとっては必要がなくなっても、他の誰かにとってはきっと「美しい」と感じられるもの。

そして「ガラクタ」なんていう言葉で表現できてしまうくらい、私たちの生活に気兼ねなく馴染むものでもあるのだと思います。

私は「BROCANTE」の店内で、心が素直になるような居心地の良さを感じました。光も空気もサラサラと美しく、まるで別世界に来たようなのに、自分の家に帰ったかのように自然体でいられる。

その感覚もまた、誰かの手の温もりが宿ったブロカントと、松田さんの想いがあるからこそ作り出せるものなのかもしれません。

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30歳を機に、思わぬ人生の転機を迎えた松田さん。その日々の中で、もうひとつ取り掛かったものがありました。それは、住まいづくり。築40年の物件を借り、リフォームしたのだとか。

ご自宅もまた、フランスの古い家具とグリーンに溢れ、お店同様に魅力的な空間でした。

続く第2話ではご自宅の様子から、松田さんにとってのフィットする暮らしとはどんなものなのかを、ご紹介します。

 (つづく)

【写真】岩田貴樹


 

もくじ

 

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松田尚美

アパレルの販売を経験後、夫とともに立ち上げた東京都自由ヶ丘にある造園のプランニングとフランスの古道具を販売する「BROCANTE(ブロカント)」の店主・バイヤーとなる。2児の母。

http://brocante-jp.biz/


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