連載エッセイ|5秒日記
「日記は1日のことをまるまる書こうとせずに5秒のことを200字かけて書くと書きやすい。日々をすごしたっきりにして忘れてしまう贅沢もすてきだけれど、私は貧乏性だから、家のちょっとした瞬間を残して覚えてわかっておきたいと思うのです」 エッセイストの古賀及子さんと、高校生の息子、中学生の娘の3人の暮らしの様子や、自身の心の機微を書きとめる日記エッセイ。月一更新でお届けします
エッセイ・コラム
【5秒日記】最終回:人と一緒にいると、どこかからアイスを噛む音がする
6/13(木)夕方帰ると娘が学校から帰っており、息子は塾へ出かけたとのこと。「お兄ちゃん、アイス2本食べてた」とのことで、この家で長らく守られている数少ない掟のひとつにアイスはひと...
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【5秒日記】第11回:できないことがもはや私にプライドを感じさせてくれるのだ
5/26(日)ゆるく閉じた目の裏に薄く光の気配がする。細く開けたら朝だった。日曜日。息子が起き出したらしく音がして、それで目が覚めたらしい。息子は休みの日も早起きだ。私も起き出して...
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【5秒日記】第10回:願ってもいない夢が、生きているだけでなぜか次々と叶う
5/7(火)なんとゴールデンウィークが終わった。今年は連休と連休のあいだに平日がはさまっていたこともあって、何の予定も入れず丸腰で挑み、実際あまり派手なことはしなかったものだから、...
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【5秒日記】第9回:「パンとご飯を食べるのか。忙しいね」と娘が言う
3/28(木)息子のお弁当を作るのに、冷凍ご飯のストックがあるはずと、期待してご飯を炊かずにいたらうっかり中途半端な量しかない。おにぎりにすると小さなひとつ分にしかならなくて、時間...
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【5秒日記】第8回:愛よりも現実的に、遠くどこか、同じ空の下にいる人の存在に思いを至らしめる
3/1(金)卵としめじのスープを作って食パンと一緒に朝ごはん。息子は食べてさっさと学校へ行って、それからしばらくして娘も目覚めてよぼよぼ台所へやってきた。娘は朝が苦手で、じっくり時...
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【5秒日記】第7回:家というのは意味もなく独特な遊びが発生し盛り上がる場だ
2/2(金)さみしくて納得がいかない。朝、目が覚めてすぐは常々気持ちが普通でない。たまにどういうわけかちょっとさみしい。このさみしさは人と会えないことに由来するような手ざわりで、け...
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【5秒日記】第6回:これは極めつけに、ともに暮らす人らしい人としてのひとことではないか
1/3(水)朝、起きてすぐに年賀状の返事を出しにポストまで。長く東京で暮らす私は、季節はずれの寒風を受けたり、北へ旅したり、冷たく乾いてきりっとした空気を頬に感じるときにいつも「正...
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【5秒日記】第5回:一生であと何回マヨネーズを買うだろうと思う
12/1(金)朝食の茹でたブロッコリーに使おうと冷蔵庫から出したマヨネーズが、チューブのなかでもうあと少ししかない。残りを搾り口へよせるべくチューブをぶんぶん振りながら、一生であと...
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【5秒日記】第4回:ベランダのすぐ向こうを低空で鳩が飛んで「プー」と鳴いた
10/27(金)薄手の羽毛布団が、ひと晩かけて体の上で90度回転したらしい。目覚めて伸ばした足が布団から出た。本来、顔の近くには布団の短辺側が沿うはずだけど、手でなぞると長く、これ...
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【5秒日記】第3回:あると思ったポストはたいてい無い
9/15(金)夏のあいだずっとさぼっていた、体重と体脂肪率の記録をつける毎朝の習慣が戻ってきた。酷暑をやりすごして起き抜けの気持ちに余裕ができたのかもしれない。ただ、この作業の落...
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【5秒日記】第2回:離れ離れになるんだなと、本来まったく感じる必要のない別れに悲しみがわく
8/16(水)お盆休みが終わったことに拗ねて早寝をしたものだから、早朝に目が覚めてしまった。起きるほどは覚醒しきっておらず、いつもの起床時間までごろごろしてやりすごす。早くに目を...
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【新連載|5秒日記】第1回:本当に夏休みみたいだと、気づくとどうも照れくさく、照れかくしにどんどん食べた
日記は1日のことをまるまる書こうとせずに5秒のことを200字かけて書くと書きやすい。5秒あれば物理も心理もそれなりに動く。何ごとかが輪郭をもった姿で目の前にあらわれる。朝から晩まで...