【メイクで変えられるもの】前編:「メイクは、まるでトランポリン?」AYANAさんと店長佐藤が、一年ぶりに対談しました
編集スタッフ 松田
店長佐藤が、ビューティライターのAYANAさんと、メイクの話だけでなく、年齢の重ね方や人との向き合い方まで語り合った対談から、ちょうど一年。
「メイクとなると、とたんに楽しみより義務感になり、何を選びどう使ったらいいか分からなくなる」という佐藤の当時の本心に、たくさんの読者の方から反響をいただきました。
いつかオリジナルでメイクアップアイテムをつくりたい。
今年4月には当店初となるメイクアップシリーズを発売。ありがたいことに合計販売数が発売から約一ヶ月で5000ピースを超え、引き続き毎日たくさんのご注文をいただけています。
▲ちょうど一年前の対談風景
「佐藤さん、メイク変わりましたね」とAYANAさん。どうやら、佐藤自身のメイクにも変化があったようです。いったいどんな風に変わってきたのでしょうか。
メイクに対して向き合うきっかけをくれ、そしてオリジナルのメイクアップシリーズの開発にも携わっていただいたビューティライターのAYANAさんと一緒におしゃべりしながら、この一年を振り返ってみました。
会うたび、まぶたにのせている色が違う?
▲今回は、遠隔でのおしゃべりとなりました(左上から時計回りに:AYANAさん、編集・松田、佐藤)
AYANAさん:
「佐藤さん、この頃会うたびに、アイメイクが変わりますね! 出会ったばかりの “義務感で化粧している” とおっしゃっていた頃は、いつも同じメイクの印象だったのですが、変わったなと思って。
そして、毎回メイクが違うのに、それがいつも佐藤さんにちゃんと似合っているんです。
借りてきたものを居心地悪いままにメイクしていると、どうしても浮いちゃうものだけれど、心から自分が好きだと思って選んで使っているものは、本人に馴染んでいくんだなと改めて感じました」
佐藤:
「えぇ! それはうれしい……。思わずニヤニヤしちゃいます。
去年の対談させていただいた際にもお話ししましたが、2年ほど前に出会ったころは、メイクに対して楽しいというより、 “わからない” という不安のほうが大きかったんです。
でも、AYANAさんと出会い、メイクや、それにとどまらず人生の話をしたりしていくうちに、雑貨や食器、洋服やアクセサリーのように、いくつかの自分の「定番」をつくるという考え方に気づけたんです。
まずは、おすすめしてもらったブルーのアイシャドウを参考に、アイメイクを2パターン、そのどちらともに合うリップを1本持って、その日の服装に合わせて選ぶようになりました。たったひとつだった自分の定番メイクが、2つ、3つと増えていくのがとても嬉しかったですね」
▲佐藤の私物コスメ。以前は絶対に買わなかったという冒険カラーが詰まったパレット
佐藤:
「たった一つだったメイクのパターンが、1から2に増えたとき。この段階をすごくすごく大きく感じました。3からその先にまで増えていく変化量より、1が2に増えたことによる自分の情緒に及ぶ影響の強さを実感しました。
そこから、だんだんと好奇心が芽生えてきて、チャレンジしたことがなかったカラーも試してみたいと自ら思えるようになって。そんな変化に自分でも驚いています」
食卓に器をスタイリングするように、色の組み合わせを楽しむ
佐藤:
「どんどん試してみようと思えたのは、メイクも、食器の組み合わせと同じなんだなと思えたことが一番大きいかもしれません。
例えば、メインのお皿は、気分に合わせて変えていく。取り皿は定番のティーマで揃えて。カラーも統一感をもたせて、多くて3色まで。ちょっと遊び心をもって、北欧食器に和食器を合わせてみたり。
そんな風に、自分にとって馴染みが深い食器や雑貨をスタイリングするように、メイクも組み合わせを考えたらいいんだ!と思ったら、すごく腑に落ちて、少しずつですが自分なりのアレンジを楽しめるようになりました。あくまで自分なりにですが(笑)」
▲「百貨店のメイクコーナーでも、手の甲をパレット代わりにして、肌にのった色を確かめつつ、色の組み合わせを考えるのが楽しくて」と佐藤
佐藤:
「冒険メイクを最初に試してみるのは、主に休日。きっと家族も気づかないくらい小さな変化ですが、新しい自分を発見できたような気がしてテンションが上がります。
イエローのアイカラーをつけて、駅前のスーパーに買い出しに行ったり、ひとりカフェでコーヒーを飲んだりするだけなのですが。でも、その時間が不思議と充実するんです。つくづく、メイクというのは誰かに見てもらう印象を決めるだけのものではなく、自分自身の情緒に作用するものだと感じます」
メイクは、まるでトランポリンの「ばね」
AYANAさん:
「自分の好きなものを、好きなように使って、気持ちが晴れやかになったら、自然と表情が変わると思うんです。佐藤さんもそんな体験をしたのかもしれません。
逆に、コンプレックスを解消するためだけのメイクは、義務になって、苦しくなってしまう。コンプレックスだと思う部分を隠したい気持ちはすごくわかるけれど、それだけだともったいないと思うんです。そしてメイクを落とした時に、きっと落ち込んでしまう。
だから、何よりも楽しい気持ちでメイクをしたいし、してほしいなと思います。そのうれしさって自然と表情に滲み出て伝わっていくものだから」
佐藤:
「たしかに、メイクで顔のパーツを変えたいというより、明るい人だな、気持ちの良い人だなと思ってもらえるような、表情や顔つきになれたらいいなと思います。
それが、わたしがメイクをする一番の理由なのかもしれません」
▲30代半ばから、唇が敏感なこともあり、口紅はほとんど塗らなかったという佐藤
▲最近は、アイメイクや洋服に合わせた口紅を楽しむようになりました。使ったアイテム:SYMBOLIC LIPCOLOR(アミュレットレッド)
AYANAさん:
「人は、うれしいことがあったときや楽しいときって、笑顔になりますよね。
メイクには、まるでトランポリンにのったときのように、地面にいるときよりもジャンプ力が上がって、その笑顔や、その人の魅力をより明るく素敵に引き出してくれる力があると信じています。
そのために、メイク道具には色や艶がある。その魅力や楽しさを、伝えられたらいいなと思います」
「哲学」からはじまった? オリジナルのメイクアップシリーズの開発を経て
▲当店のメイクアップシリーズ。アイカラー5色・リップカラー3色のラインナップ
佐藤:
「発売に寄せたコラムでも綴ったのですが、AYANAさんと出会い、『どんな顔になりたいかは、どんな暮らしをしたいかときっと同じ』だということ、メイクも『雑貨のように、インテリアのように、洋服のように』選んで考えていいんだと気づけたことが、オリジナルのメイクアップシリーズ開発の糸口になりました。
ただ化粧品をつくるというのは、私たちにとって初めての試み。一筋縄でいくわけがありません。そこで、わたしが信頼を寄せているAYANAさんに開発に携わっていただくことになったんです」
AYANAさん:
「開発に携わって伝わってきたのは、“私たちはこんな風に変わりたい。逆にこの部分は変えたくない” という、ある意味で哲学のような想いでしたね。そこは、最初からずっとブレなかった。
元々わたしは想いや概念を形にすることが好きなので、その『北欧、暮らしの道具店』らしい哲学を、具体的にどんな化粧品にしていくかを考えるのは、やりがいを感じました。
でも、作り手自身が、心から惚れ込んで好きにならないと、プロダクトの魅力は半減してしまうもの。開発チームのみなさんも、化粧品という初めての分野で、熱量高く “これだ!” と思うものを作り上げるまでの過程は、きっとしんどいことも多かったはず。
ようやく出来上がった、アイカラーの5色が揃って並んだとき、チームみんなの表情がパッと明るくなったのが印象的でした」
▲開発段階の風景。AYANAさんにアドバイスをいただきながら、成分の配合、透明感やパール感、触り心地や色の組み合わせを確認。サンプルができては試すの繰り返しでした
保守的な気持ちと、冒険したい気持ちと
▲アイカラーで人気のクリアムーンと、フォレストグリーン
佐藤:
「頭のなかにある抽象的な構想や、肌で感じたことを言語化するのが本当に難しかった。それをAYANAさんにひとつひとつ通訳してもらいながら、つくっていきましたね。発売するまで1年もかかってしまいましたが……。
特にこだわったのが、色のラインナップ。ひとって、自分にとって落ち着くものを手にしたいという保守的な部分と、どこかで枠をはみ出してアップデートしたい部分と、両面があると思っているんです。
AYANAさんに最初にメイクを教わったとき、同じような感覚があって、当店のお客様ももしかしたら共感してくれる感覚かもしれないと思いました。
だからオリジナルのメイクアップシリーズは、保守的な気持ちと冒険的な気持ち、どちらも叶うような色展開をしたくて」
▲佐藤自身が、一番よく使うのもこの2色。まぶたのホール全体にクリアムーンを、二重幅から少しだけはみ出すようにフォレストグリーンを重ね塗り。仕上げにネイビーのカラーマスカラを合わせて
佐藤:
「その象徴として出来上がったのが、定番として手にとってもらいやすいクリアムーンと、チャレンジカラーのフォレストグリーン。
結果として、2色ともお客様からも好評いただく人気のカラーになって、本当に嬉しいなと感じます」
自分の顔を鏡で見るのはエネルギーがいるけれど
AYANAさん:
「メイクって、 “わぁかわいい!” だけじゃ終われない世界ですよね。実際に顔にのせてみて、自分の顔が好きだなと思えるまでがゴールだから、難しくて面白いんだと思います。
そして、自分の顔をよくしていこうって、すごくエネルギーのいること。それも正解がないから大変。よいしょ!って気合いを入れて向き合わないとできない。
自分を客観視するのは、とても難しいことだと思いますが、いかに自分自身の顔に慣れるかが1つのコツだと思うんです。1日1回しか鏡を見ていなかったのを、1時間に1回にすれば、自分の顔と向き合う1回の気持ちの負担が軽くなる。そうすると顔つきや肌のコンディションがわかってきて、ケアがしやすくなります。
あとは、自分に似合うものを決めすぎないというのも大事。肌のイエローベースやブルーベースというのはひとつの基準ですが、それに捉われすぎてチャレンジしないのはもったいないと思います」
佐藤:
「これまで避けていたカラーも、メイクの仕方ひとつで、びっくりするほど自分に馴染むことがあるんだというのは、AYANAさんに教えてもらって、肌で実感しました。
20代の終わりに、北欧のビンテージ食器が好きになって、食器を集めだした頃と同じくらい、今、40代からメイクという新しい楽しみを見つけられて本当にワクワクしています。まだまだ知りたいことや試したいことがいっぱいあるというのは、大袈裟かもしれませんがわたしにとってはこの先を生きていくためのささやかな希望になりそうです。
個人としてだけでなく、会社として・店としてオリジナルのメイクアップシリーズを開発した責任もありますから、その責任を個人の体験と重ね合わせながら、今後もっともっとお客さまに喜んでいただけるかたちで果たしていきたいとも思っています」
***
さて、明日公開の後編では、メイクアップシリーズの中でも人気のカラーで、スタッフが実際にメイクをした様子をお届けします。
カラーを選ぶ際の参考になったらうれしいです。
photo:滝沢育絵(2枚目以外)
make up:LIM 原澤雅
もくじ
▼オリジナルのメイクアップシリーズ
KURASHI&Trips PUBLISHING
メイクアップシリーズ
▼AYANAさんのエッセイ
44歳のじゆう帖
バックナンバー
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
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