特集|フィットする暮らしのつくり方vol.04 一田憲子さん編 第4話『編集者の暮らしの素顔』
ライター 大浦
4日間連続でお届けしている
フィットする暮らしのつくり方 vol.4
一田憲子さん編。
本日はついに最終話となります。
取材の当日、急遽開かれた「一田食堂」の様子や、
編集者という仕事への想いなど、
一田さんの素顔に迫っていきたいと思います。
まずは、一田食堂の様子から
お届けします!
開店!一田食堂
インタビューをしていると、
一田さんがふと時計を見上げてひと言。
「ちょっと、ごはんにしようかなと思うんですけど」
話を聞いていた齋藤さんと共に、
「え!え〜〜!」と嬉しさのあまり
うろたえてしまいました。
本日のメニューは
海南チキンライス的なごはん、
にんじんとツナのサラダ、
あさりのお味噌汁。
一田さんの著書「一田食堂」を読み
うらやましい!味わいたい!
と思っていたので、あっさり夢が叶うと
人は狼狽えるということを覚えました(笑)。
「これ店長が聞いたら吠えますね〜」と
ウキウキ楽しそうな齋藤さん。
「まじっすかー!!」と既に吠えている
カメラマンの鍵岡さん。
そして
「朝にやっておく予定だったんだけど、
間に合わなくって〜」と
慌ただしく動き始めた一田さん。
お料理をしながら、台所でインタビューは続きます。
今でも不安に押しつぶされそうになる
ごはんをつくりながらのインタビューでは、
朝食用のマフィンを網で焦がしたり、
作っていたお味噌汁を吹きこぼしたり。
「わ〜〜!」と慌てる姿も。
そしてお話を聞けば聞くほど、
「私だめだめなんで」「まめじゃないから」
といった言葉がポツポツと出てきました。
編集者・ライターとして社会や他者から認められ、
お客さまから愛される本づくりができて、
周囲からすると順風満帆のように見えるけれども、
心の中は少し違うようです。
「私ペシミスト(悲観主義)なんです。
昔から優等生タイプなことに
コンプレックスもあります。
今でもお布団をかぶると、
不安で押しつぶされそうになったりしますよ。
昔から、自己嫌悪になりやすくて
悪い方、悪い方に考えちゃうんです。」
自分の負の部分を、人に話すのは
少し勇気のいることだったりします。
でも、一田さんはその不安や弱い部分を
会話の中で包み隠したりはしません。
しかも笑いながら、楽しく話してくれます。
その姿は、一緒にいる人を、安心させ
気持ちをゆるりとほどいてくれるようでした。
そしてそれは、一田さんが書く文章から
伝わってくる感覚と似ていました。
一田さんは著書の中で、
文章を書くということについて
こう綴っています。
「私は書くことが仕事だから、
自分が気づいたことを文章に書く。
そして願わくば、その『気づき』が
誰かに伝わればうれしいなと思う。
−『彼女たちの年齢革命』」
世の中には「気づき」をくれる文章というのが、
きっとたくさんあります。
読み手の心にボッと火をつけたり、
頭をがーんと殴るような衝撃だったり、
ふわっと風を吹かせたり。
その伝え方はさまざまだと思います。
一田さんの伝え方は、
誰かと手をつないだとき、伝わってくるあたたかさに
似ているような気がします。
体温がじわりじわりと伝わってくる感覚。
「もし、そう受け止めてもらえてるとしたら、
たぶん自分に自信がないからじゃないですかね。
素晴らしい人がいても、私はその人のように
素晴らしくできない。
そんな私でも感じることは『こういうこと』だって。
自分にどう取り入れるのかを
書きたくなっちゃうんです。
優等生になっちゃったり、不安がったり、
こんなだめだめな私でも、
あの人の何かを取り入れられるとしたら
なんだろう、って思って
書いているからかもしれませんね。」
人に興味があるからこの仕事をしている
「暮らしのおへそ」を中心に、
いろいろな人に会って話を聞く、
という仕事に対する想いを
一田さんはこう話してくれました。
「人に興味があるから
この仕事をしているんだと思うんですよね。
すごい社交的とかそういうことではなくて、
自分がどうやって生きていけばいいかを、
人に教えてほしい、ということなんでしょうね。」
それは、もしかすると
高校生のときに一田さんが関わった
思春期の子どもたちが
「どうやって生きていけばいいか」
「なんのために働くのか」
そういった青臭い問いを投げかけてきたのと同じで、
思春期を過ぎ、大人と呼ばれる年齢になっても、
人は心の中で、知りたい、教えてほしい、と
どこかで求めているのかもしれません。
年齢を重ねていくと、
自分の考え方に芯がでてきて
ブレないという良さも出てきます。
でも「知りたい」という想いがある。
その気持ちがあるから、
聞いたことや教えてもらったことを、
どんどん暮らしに取り込んで、
一田さんは、まるで身体と心を染めているようです。
そして、いろんな色に染まりながら、
自分だけの色を探し続けているのかもしれません。
“隣の家の”一田憲子さん
雑誌や本の中で見えている「一田憲子さん」は、
暮らしも仕事もパーフェクトにこなしている
雲の上の存在のような人でした。
まんぷくなお腹と共に、
取材を終えてさよならを告げるときには
いつの間にか、それが「隣の家の一田さん」
になっていたことに気づきました。
悩んだり、自分が嫌になっていたり、
誰かのまねをしたり、
片付けものがたまっていたり。
きっとそれは誰かと同じ。
でも隣の家の一田さんは、
おすそわけをもってきながら
「おいしいものを見つけました〜」
と教えてくれるのです。
流れていく毎日の中には、
小さな小さな、心動く瞬間が
散らばっていることを。
たまに「うまくいかないよね〜」
とうんうん頷きながら。
それでは最後に、
一田さんにバトンタッチをして
この特集を終わらせていただきます。
4日間、記事を読んでいただいたみなさま
ありがとうございました!
一田さんにとって、「フィットする暮らし」とはどんなものですか?
「フィットする暮らし……。
そもそも今の暮らしが、
自分にフィットしているかどうかって
どうやったらわかるのでしょうか?
私はインテリアや暮らし回りの
記事を書くライターです。
素敵な方の家を訪ね、
素敵なライフスタイルを見るたびに、
「いいな〜、私もあんな風になりたいな〜」
と憧れました。
そして、取材が終わるやいなや、
そこで見た素敵な道具や器を買いに走ったものです。
でも、いくら同じ鍋を買っても、
私は“あの人”にはなれない。
私は私にしかなれない……。
ってことにやっと気づいたのはごく最近のことです。
つまり、何がフィットしているか。
それは自分で決めていいんだ!
そう気づいたってことです。
こんな単純なことがわかるまで、
ものすご〜く遠回りしてきました。
でも、遠回りしたからこそ、
その発見がすご〜く嬉しかった。
自分で自分にOKを出せる暮らし。
それが、私にとっての
“フィットした暮らし”なのかなあと思います。」
◎一田さんの著書の一部はこちら。↓↓↓
【暮らしのおへそ vol.16】
暮らしのおへそ vol.16 (私のカントリー別冊) 主婦と生活社 主婦と生活社 2013-08-30 |
【大人になったら着たい服 2014秋冬】
大人になったら、着たい服 2014秋冬 (ナチュリラ別冊) 主婦と生活社 主婦と生活社 2013-10-18 |
【毎日の大人服】
毎日の大人服 (ナチュリラ別冊) Permanent Age 主婦と生活社 2013-10-30 |
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もくじ
◎第1話「編集者 一田憲子さんを訪ねました」
(12月16日公開)
◎第2話「暮らしと仕事の愛用道具」
(12月17日公開)
◎第3話「自分らしく家で過ごすためのこだわり」
(12月18日公開)
◎第4話「編集者の暮らしの素顔」
(12月19日公開)
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